手折たを)” の例文
これは寧ろ、黒人の、「いざ児ども大和へ早く白菅しらすげ真野まぬ榛原はりはら手折たをりて行かむ」(巻三・二八〇)の方がまさっているのではなかろうか。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そして殊に若く美しい花が人に手折たをられたやうに死んで行くことは、限りない幸福なことだと考へてゐたのであつた。そして生れつき弱い彼女は、これまで度々病氣をした。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
散りこすなゆめと言ひつゝ、幾許こゝだくるものを、うたてきやしこほとゝぎす、あかつき心悲うらかなしきに、追へど追へど尚ほし鳴きて、いたづらに地に散らせれば、すべをなみぢて手折たをりて、見ませ吾姉子あぎもこ
浮標 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
けふも手折たをりにたわいな。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かげにひともと手折たをりては
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
くて手折たをろか
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なにならんと小走こばしりしてすゝりつ一枝ひとえだ手折たをりて一りんしうりんれかざしてるも機嫌取きげんとりなりたがひこゝろぞしらず畔道あぜみちづたひ行返ゆきかへりてあそともなくくらとりかへゆふべのそら雲水くもみづそう一人ひとりたゝく月下げつかもん何方いづこ浦山うらやましのうへやと見送みをくればかへるかさのはづれ兩女ふたりひとしくヲヽとさけびぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
例えば、「うち手折たを多武たむの山霧しげみかも細川の瀬に波のさわげる」(巻九・一七〇四)という、舎人皇子とねりのみこに献った歌までに寓意を云々するが如きである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いそうへふる馬酔木あしび手折たをらめどすべききみがありとはなくに 〔巻二・一六六〕 同
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
合歓ねむはなひくく匂ひてありたるを手折たをらむとする心利こころどもなし
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)