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御身分
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ごみぶん
存じ君へ忠節を盡す心底より天一坊殿
御身分再吟味願候に越前へ閉門仰付られしと
承まはる町奉行たるものが支配内の事を
へい/\。主「
以前は
然るべきお
方の
成れの
果で、まア
此時節が
斯う
変つたから、
当時然ういふ
御身分に
零落れなさつたのだらうが、
何うもお気の毒なことで…。 ...
此方が
此通りつまらぬ
活計をして
居れば、
御前の
縁にすがつて
聟の
助力を
受けもするかと
他人樣の
處思が
口惜しく、
痩せ
我慢では
無けれど
交際だけは
御身分相應に
盡して
お
心細き
御身なればこそ、
小生風情に
御叮嚀のお
頼み、お
前さま
御存じはあるまじけれど、
徃昔の
御身分おもひ
出されてお
痛はしゝ、
我れ
後見まゐらする
程の
器量なけれど
聞より相摸守殿は
恐ながら左樣の
仰聞らるゝ計にては
會得も
仕つり難し右には
其御因縁も候はんが其を
委敷仰聞られ
下されたしといふ
其時伊賀亮少しく
席を
進み相摸守殿に向ひ相摸守には
上の
御身分を
それでもあなたは一
家の
御主人さまに
成りて
釆配をおとりなさらずは
叶ふまじ、
今までのやうなお
樂の
御身分ではいらつしやらぬ
筈と
押へられて、されば
誠に
大難に
逢ひたる
身と
思しめせ。
無念なりと
蹉跎なして
怒給ひしが今更
詮方も無りしとぞ
假初にも十五萬石にて播州姫路の城主たる
御身分が
素性もいまだ
慥ならぬ天一坊に下座
有しは
殘念と云も餘りあり天一坊は
流石の
酒井家さへ下座されしと
態と
言觸し其
威勢濤の如くなれば東海道筋にて誰一人爭ふ者はなく
揚々として下りけるは
あなたは
左樣仰しやれど
母などはお
浦山しき
御身分と申て
居りまする。