庭下駄にはげた)” の例文
淺蜊あさりやア淺蜊あさり剥身むきみ——高臺たかだい屋敷町やしきまちはるさむ午後ごご園生そのふ一人ひとり庭下駄にはげた爪立つまだつまで、そらざまなるむすめあり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「昨日の朝雨が降つた筈だ。——畑の端つこにある、生垣のところまで行つた足跡が澤山あるが、——おや/\、庭下駄にはげた跣足はだしと滅茶々々に入り亂れてゐる」
かゝさんれをつても御座ござんすかとたづねて、針箱はりばこ引出ひきだしから反仙ゆふぜんちりめんのはしをつかみし、庭下駄にはげたはくももどかしきやうに、でゝ縁先えんさき洋傘かうもりさすよりはや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庭下駄にはげたの重きあゆみや露のはぎ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
へたのが何時いつびて、丁度ちやうど咲出さきで桔梗ききやうはなが、浴衣ゆかたそで左右さいうわかれて、すらりとうつつて二三りんいろにもればかげをも宿やどして、雪洞ぼんぼりうごくまゝ、しづかな庭下駄にはげたなびいて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
打水うちみづのあとかろ庭下駄にはげたにふんで、もすそとる片手かたてはすかしぼね塗柄ぬりえ團扇うちわはらひつ、ながれにのぞんでたつたる姿すがたに、そらつきはぢらひてか不圖ふとかゝるくもすゑあたりにわかくらくなるをりしも
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すぐ女中ぢよちう案内あんないで、おほき宿やどしるした番傘ばんがさを、前後あとさきそろへて庭下駄にはげた外湯そとゆく。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)