幾等いくら)” の例文
……数へ来れば幾等いくらもあるが、結句、田島校長=0エクオールゼロといふ結論に帰着した。詰り、一毫の微と雖ども自分の気に合ふ点がなかつたのである。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
幾等いくらベルを鳴らしても戸が明かないので、仕方なしに門の石段の上へ革包かばんを据ゑて其れに腰を掛けて二人で書物を読んで居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「じゃ、まいりましょう、何も心配しないのが好いのですよ、今はどこにもじょちゅうが足りなくって困っている時ですから、幾等いくらでも奉公口はあるのですよ」
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お前さんは正直者だ。感心な男だ、お蔭でたすかったよ。これは幾等いくらもしないものだが、先の夫の形見かたみでね。」
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
身体の重サと落て来る勢いでメリ/\と凹込めりこむ、上から血眼でおりて来て抱起すまでには幾等いくらかの手間が有る其中に血が尽きて、膨上ふくれあがるだけの勢がきえたのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
させ置て不意ふいに幸手へ押掛おしかけ三五郎を討取うちとる工夫くふう幾等いくらも有うと言ふに掃部も成程敵は知て居上ならばマア急事せくこともねへが彼が兄弟分の重四郎と云ふやつは少し手強てごはひ奴なり然し侠氣たてひきも有奴だから親分の敵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌朝法界屋が立つて行つた後、お夏は門口に出て、其男の行つた秋田の方を眺め/\、幾等いくら叱つてもおどしても二時間許り家に入らなかつた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
岩本は羨ましいうえに好奇ものずきも手伝って、どこへ往くか見たくなったので、己も急いで山西の置いて往った金に幾等いくらかの金を足して、食卓テーブルの上へ投げだして
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
... 幾等いくら捕えるかも知れぬ所だ」と云い谷間田は又茶かし顔にて「フ失敬なッ、フ小癪な、フ生意気な」と呟き居るよし独り荻沢警部のみは此少年探偵に後来の望みを
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「それでは幾等いくらと申すか。」
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
段右衞門に向ひ是々これ/\重四郎ではない段右衞門殿そんな譯のわからぬ強情がうじやうよしにしろ今奉行ぶぎやう樣のおつしやる通りだ幾等いくら其方そなたかくして白状ねばとていのちつながる事は金輪こんりんざいありねへそれ迚も三五郎と申合したかは知ねヱが今となつては未練みれんな男だまことくるしみをしみの人間にんげんだなア掃部や藤兵衞茂助の二人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うして先生のお世話を頂いてると、私はモウ何日いつまでも此儘このまんまで居た方が、幾等いくら楽しいか知れませんけれども。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、声をあげて呼んでみたが、林の枝葉えだはを吹く風の音ばかりで人声ひとごえはしなかった。そして、幾等いくら呼んでも返事がないので、隠れ家へ帰ろうと思って呼ぶことをよして歩いた。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
幾等いくら商売が暇だからとて目
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私はそれで幾等いくらか安心したのでそこへ尻をえてしまって、電車がなくなるまで飲んでいた。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長さが一尺ばかりだから男でもチョン髷にいって居る髪の毛は是だけのたけは有るが今時の事だから男は縮毛ならかって仕舞うからないのは幾等いくらか髪の毛自慢の心が有る奴だ男で縮れっ毛のチョン髷と云うのは無い(大)爾々そう/\縮れッ毛は殊に散髪にもって来いだから縮れッ毛なら必ず剪て仕舞う本統に君の目は凄いネ(谷)爾すれば是は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
何人だれに訊いても同じような返事であった。そのうちに夕方になって湖のおもてがねずみがかって来た。喬生は幾等いくら訊いても女の家が判らないので老人のことばを信ずるようになって来た。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
謙作は廊下へ出ると内兜うちかくしに手をやって紙入を出してみた。金にはすこしも異状がなかった。彼は幾等いくらか女に置いて往かなくてはならないと思ったが、なんだかばかばかしくもあった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
(また金か、この間、くれてやったのが、もう無くなったのか、幾等いくらいるのだ)
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
許宣は腰につけた銭袋から幾等いくらかの銭をって舟の上に置いた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
幾等いくらごまかしたって、ちゃあんと判ってるわ、彼奴あいつよ」
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
忰は幾等いくらか心が落ちついていた。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)