年輩としごろ)” の例文
吉里は二十二三にもなろうか、今がかせぎ盛りの年輩としごろである。美人質びじんだちではないが男好きのする丸顔で、しかもどこかに剣が見える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
夫れは下町の相場とて折かへして來るは無かりき、さるほどに此ほどの朝まだき四十に近かるべき年輩としごろの男、紡績織の浴衣ゆかたも少し色のさめたるを着て
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
板のやうな掛蒲団をあはせの上にかぶつて禿筆ちびふでを噛みつゝ原稿紙にむかふ日に焼けてあかゞね色をしたる頬のやつれて顴骨くわんこつの高く現れた神経質らしいおな年輩としごろの男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
其頃そのころ大佐たいさ年輩としごろ三十二三、威風ゐふう凛々りん/\たる快男子くわいだんしで、その眼光がんくわう烱々けい/\たると、その音聲おんせい朗々ろう/\たるとは、如何いかにも有爲いうゐ氣象きしやう果斷くわだん性質せいしつんでるかをおもはしめた。
このおとこは三さき町人ちょうにんで、年輩としごろは三十四五の分別ふんべつざかり、それがなみだまじりにんなことをもうすのでございますから、わたくし可笑おかしいやら、どくやら、まったあきれてしまいました。
それは下町したまち相場さうばとてをりかへしてるはなかりき、さるほどにこのほどのあさまだき四十しじふちかかるべき年輩としごろをとこ紡績織ばうせきおり浴衣ゆかたすこいろのさめたるを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
家賃は三十日限りの取たてにて七円五十銭といふに、それは下町の相場とて折かへして来るは無かりき、さるほどにこのほどの朝まだき四十に近かるべき年輩としごろの男
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそおほしと慇懃いんぎんなり、このほどはお不快ふくわいうけたまはりしが、最早もはや平日へいじつかへらせたまひしか、お年輩としごろには氣欝きうつやまひのるものとく、れい讀書どくしよはなはだわろし、大事だいじ御身おんみ等閑なほざりにおぼしめすなと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)