年少としわか)” の例文
絳雪『おもふに年少としわか書生の薄倖なるは什の九なり。君が情は篤からむ。その情によりて交り、淫せじ。昼夜狎れむはおのれえせじ』
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
うですね、年少としわか田舍ゐなか大盡だいじんが、相場さうばかゝつて失敗しつぱいでもしたか、をんな引掛ひつかゝつてひど費消つかひぎた……とでもふのかとえる樣子やうすです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして未だ年少としわかな、どうにでも延びて行く屋根の上の草のような捨吉の容子ようすながめた。この主人は成るべく捨吉を手許に置きたかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ロミオ わしをしへう。したが、その若樣わかさま彌〻いよ/\はッしゃる時分じぶんには、たづねてござるいまよりはけてゐませうぞ。はて、いっ年少としわかのロミオはわしぢゃ。これよりまづいのはいまはない。
弟夫婦は年少としわかきまま無益むやく奢侈おごりに財をついやし、幾時いくばくも経ざるに貧しくなりて、兄のもと合力ごうりょくひに来ければ、兄は是非なく銭十万を与へけるに、それをも少時しばしつかひ尽してまた合力を乞ひに来りぬ。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
年少としわかくて屈竟くつきやうきやくは、身震みぶるひして、すつくとつて、内中うちぢうめるのもかないで、タン、ド、ドン!との、其處そこしとみけた。——
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
捨吉は年少としわかな善どんの居る方へ行って、せめて箸箱はしばこの類を売ることを手伝おうとして見た。何処へ行っても、結局手の出しようがないように思った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と真顔で法師の言うのを聞いて、うばは、いかさまな、その年少としわかで、出家でもしそうな人、とさもあわれんだ趣で
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年少としわかな善どんまでが働きに来ていた。それを見ても、あの大勝の大将が小父さんの陰に居て、どれほどこの伊勢崎屋の経営に力を入れているかということも想われた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おとっさん」と言い、義理ある弟へ話しかけるにも「宗太君、宗太君」と言って、地方のことが話頭はなしに上れば長崎まで英語を修めに行ったずっと年少としわかなころの話もするし
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
名は知らず、西洋種の見事な草花を真白まっしろな大鉢に植えて飾った蔭から遠くその半ばが見える、円形まるがた卓子テエブルを囲んで、同一おなじ黒扮装くろいでたち洋刀サアベルの輝く年少としわかな士官の一群ひとむれが飲んでいた。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
細君さいくん張氏ちやうしより、しかも、いつつばかり年少としわか一少女いちせうぢよ淡裝たんさう素服そふくして婀娜あだたるものであつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幸作は正太よりも年少としわかであった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
走り行きたる三人みたりの軍夫は、二にん左右より両手を取り、一にんうしろよりせなを推して、端麗多く世に類なき一個清国の婦人の年少としわかなるを、荒けなく引立ひったて来りて、海野のかたえに推据えたる
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
走り行きたる三人みたりの軍夫は、二人左右より両手を取り、一人うしろよりせなして、端麗たんれい多く世に類なき一個清国の婦人の年少としわかなるを、荒けなく引立て来りて、海野のかたえ推据おしすへたる
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
途轍とてつもない処へ行合わせて。——お夏さんに引込まれて、その時の暗号あいずになった、——山の井医院の梅岡という、これがまた神田ッ児で素敵に気の早い、活溌な、年少としわかな薬剤師と、二人で。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その増上寺に、年少としわかな美僧で道心堅固な俊才えらいのが一人あった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)