天空てんくう)” の例文
その代り一本の茶褐色ちゃかっしょくの煙がすーっと立ちのぼり、轟々ごうごうたる音をたてて天空てんくうはるかに舞いあがっていく。その有様は、竜巻たつまきの如くであった。
勿論もちろん旋風つむじかぜつねとて一定いつてい方向ほうかうはなく、西にしに、ひがしに、みなみに、きたに、輕氣球けいきゝゆうあだか鵞毛がもうのごとく、天空てんくうあがり、さがり、マルダイヴ群島ぐんたううへなゝめ
たッたいままで天空てんくうにあった竹童ちくどう蛾次郎がじろう、こんどは湖水の底で、なおもはげしくあらそっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されど天空てんくうつねゆるその金光きんくわうを仰ぎみれば
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
僅か角砂糖かくざとうほどのものを崩壊することによって生ずるエネルギーで、わが国の全艦隊を天空てんくうマイルの上へまで吹き上げることが出来るのである。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ガンブローてう」に突破つきやぶられたる輕氣球けいきゝゆうは、水素瓦斯すいそぐわするゝおとともに、キリヽ/\と天空てんくうくだつて、『あはや』といふに、大洋たいやう眞唯中まつたゞなか落込おちこんだのである。
さわやかな秋風が、一陣、まッさかさまにいて、地上の紅葉もみじ天空てんくうへさらってゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒檀のつちをもて天空てんくうりきざむ時
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
一同は、いいようのない気味わるさをもって、天空てんくうにのこされた最後のせまい星の光りが消えていくのを見まもっている。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
勿論もちろんふね嚴然げんぜんたる規律きりつのあることたれつてる、たとへ霹靂へきれき天空てんくうくだけやうとも、數萬すうまん魔神まじんが一海上かいじやう現出あらはれやうとも、船員せんゐんならぬもの船員せんゐん職權しよくけんおかして
天空てんくうのふたりは、朝から今まで、たがいに、飲まずわずである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんなわけで、折角せっかく生捕いけどったたった一匹のルナ・アミーバーでありましたが、惜しくも天空てんくういっし去ってしまったのです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき機体がスーッと浮きあがったかと思うと、真青まっさおな光の尾を大地の方にながながとのこして、宇宙艇はたちまち月明げつめい天空てんくう高くまい上った。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こんなへんぴな天空てんくうに市街などがあって、たまるものか。飲食店や売店があるといってもだれが信じるだろうか。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
出鱈目でたらめをいうな、日本人ヤポンスキー。気球はいつかは地上に下りるもんだ。天空てんくうに上ったきりなんてぇことはない」
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはまわりの壁が、ひじょうにつよかったせいで、爆発と同時に、すべてのものは弱い屋根をうちぬいて、高く天空てんくうへ吹きあげられ、となりの部屋へは、害がおよばなかったわけだ。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
古い煉瓦積みの壁体へきたいには夕陽が燃え立つように当っていた。はるかな屋根の上には、風受けのつばさをひろげた太い煙筒えんとつが、中世紀の騎士の化物のような恰好をして天空てんくうささえているのであった。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんとなく、「ジャックと豆の木」の物語に出て来る天空てんくうおにしまにまでとどく豆蔓まめづるの化物のように思われた。螺旋階段の下には事務室へ通ずる入口の外にも一つ廊下に通ずる入口があった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その忠魂記念塔は、今ではS公園内に天空てんくうして毅然きぜんと建っている。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
連合科学協会員は最近天空てんくうにおいておどろくべき観測かんそくをした。それはどういうことであるかというと、わが地球をねらってこちらへ進んでくるふしぎな星があるということだ。それは彗星すいせいではない。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)