大股おほまた)” の例文
その男は大股おほまたに右手に入った。それから小さな親切さうな青いきものの男がどうしたわけか片あしにリボンのやうにはんけちを結んでゐた。
花椰菜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ぶん酩酊よつぱらつたあし大股おほまたんで、はだいだ兩方りやうはうをぎつとにぎつて、手拭てぬぐひ背中せなかこするやうなかたちをしてせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ彼ひとりが、ムクムクと堅く肥え太つて、ゆるやかに張つたお腹を突き出して、非常に威張つた姿勢をして、手を振つて大股おほまたに室の中を歩いてゐるのであつた。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
つゞいて尻端折しりはしをり股引もゝひきにゴム靴をはいた請負師うけおひしらしい男のとほつたあとしばらくしてから、蝙蝠傘かうもりがさ小包こづゝみげた貧しな女房が日和下駄ひよりげたで色気もなく砂を蹴立けたてゝ大股おほまたに歩いて行つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
富岡は大股おほまたに歩いてゐる。ゆき子には、富岡が親切なのかどうか、少しも、判らなかつた。後姿を、ゆき子はいやしいと思つた。富岡は、ヘルメット帽子を手にぶらぶら振つてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
だまつて大股おほまたに、あとをもず、廣々ひろ/″\とした野山のやまはうつてしまひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
太郎さんは、元気よく大股おほまたに、そこらを駈けまはりました。千代子さんも、太郎さんのあとについて、あぶなさうな足つきでとび歩いてゐましたが、やがて、道ばたへかゞんでしまひました。
(新字旧仮名) / 土田耕平(著)
戸内とぬちには燈明き室あまたあり。室ごとに大卓幾箇か据ゑたるを、男女打雜りたる客圍み坐せり。われは勇を鼓して先づ最も戸に近き一室を大股おほまたに歩み過ぎしに、諸人は顧みんとだにせざりき。
事実、私はちんちくりんの身体の肩を怒らせひぢを張つて、廊下で行き違ふ新入生のお辞儀を鷹揚おうやうに受けつゝ、ゆるく大股おほまたに歩いた。さうしてたかであらを見出し室長の佐伯に注進した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ひろ股衣ヅボン大股おほまた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その雲のこっち、豆の畑の向ふを、ねずみ色の服を着て、鳥打をかぶったせいのむやみに高い男が、なにかたくさん肩にかついで大股おほまたに歩いて行きます。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「おや/\まあ、こつちのはうはえゝこつたなあ、大豆でえづでもかうだにとれて」おつたは小柄こがら身體からだ割合わりあひ大股おほまたはこんでめう足拍手あしびやうしりつゝ這入はひつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
比嘉は桟橋のはづれに立つて、白いハンカチを振つてゐたが、一寸、小腰をかゞめて、大股おほまたに桟橋を去つて行つた。鞄を振るやうにして歩いて行く、医者の後姿が富岡には頼もしく見えた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
ずうっと下の方の野原でたった一人野葡萄のぶだうを喰べてゐましたら馬番の理助が欝金うこんの切れを首に巻いて木炭すみの空俵をしょって大股おほまたに通りかかったのでした。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大股おほまたに踏んで行かれない。もう水の流れる所も通ったし、ずゐぶん早い。この二枚の小さな縦板は汽車をよけるためのだな。こゝで首尾よくよけられるだらうか。
山地の稜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「おい。フウ。ちょっと待ちなさい。なぜ、おまへは、さう、ちょろちょろ、つまだてしてあるくんだ。男といふものは、もっとゆっくり、もっと大股おほまたにあるくものだ。」
鳥箱先生とフウねずみ (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
白服のボーイが大きな銀の盆に紅茶のコツプを十ばかり載せてしづかに大股おほまたにやつて来ました。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それからにはかにまじめになってしばらく顔をくしゃくしゃにしてゐたがいよいよ勇気にちて来たらしく一ぺんに畳をはね越えておもてに飛び出し大股おほまたに通りをまがった。
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
川岸の赤土のがけの下の粘土を、五とこ円くほりまして、その中に染料をとかし込み、たのまれた鳥をしっかりくはへて、大股おほまたに足をひらき、その中にとっぷりと漬けるのでした。
林の底 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
三つ森山の方へかせぎに出るらしく谷地のふちに沿った細いみち大股おほまたに行くのでしたがやっぱり土神のことは知ってゐたと見えて時々気づかはしさうに土神のほこらの方を見てゐました。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
『紅茶はいかがですか』と云ひながら大股おほまたにそして恭しく向ふへ行きました。
氷河鼠の毛皮 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
土神は草をどしどし踏み胸を踊らせながら大股おほまたにあるいて行きました。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
海岸を大股おほまたに歩いてゐた。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大股おほまたに歩いてゐたから
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
学士はいよいよ大股おほまた
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)