大柄おおがら)” の例文
二人の間には火鉢があって、引馬野ひくまのを渡って来る夜風が肌寒いから、竜之助は藍木綿あいもめんの着衣の上に大柄おおがら丹前たんぜんを引っかけていました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのころ良人おっとはまだわこうございました。たしか二十五さい横縦よこたてそろった、筋骨きんこつたくまましい大柄おおがら男子おとこで、いろあましろほうではありません。
村上という方は、色の白い眉の太い大柄おおがらな肥った男である。大分強い近眼鏡をかけているが、態度から容貌から凡て快活な印象を与える。
球突場の一隅 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
色の浅黒い眉毛まみえの濃い大柄おおがらな女で、髪を銀杏返いちょうがえしにって、黒繻子くろじゅす半襟はんえりのかかった素袷すあわせで、立膝たてひざのまま、さつ勘定かんじょうをしている。札は十円札らしい。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヘエ、服装なりですか、服装なりはもちろん襟掛けのあわせで、梅に小紋の大柄おおがらを着、小柳繻子こやなぎじゅすを千鳥に結んでおりました。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俊助しゅんすけは眼を挙げた。と、果して初子はつこの隣に同年輩の若い女が、紺地に藍の竪縞たてじまの着物の胸を蘆手模様あしでもようの帯に抑えて、品よくすらりとたたずんでいた。彼女は初子より大柄おおがらだった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
愛子の着かえた大柄おおがらな白の飛白かすりも、赤いメリンスの帯も、葉子の目を清々すがすがしく刺激した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
真佐子はたもとを顔へ当てて、くるりとうしろを向く。としにしては大柄おおがらな背中が声もなく波打った。復一は身体中に熱くこもっている少年期の性の不如意ふにょいが一度に吸い散らされた感じがした。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼の前にはあお長手ながてな顔の紫色の唇をした大柄おおがらな女の姿が浮んでいた。
白っぽい洋服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大柄おおがらな娘というのではないが、錦子はシックリした肉附きだ。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
楽屋へ来たのは洗い髪の中年増ちゅうどしま。色が白くて光沢つやがある。朱羅宇しゅらう煙管きせると煙草盆とをさげて、弁慶縞の大柄おおがらに男帯をグルグル巻きつけて
べつうつくしいほどでもありませぬが、体躯からだ大柄おおがらほうで、それにいたって健康たっしゃでございましたから、わたくし処女時代むすめじだいは、まった苦労くろうらずの、丁度ちょうどはる小禽ことりそのまま
模様やしま派手はでなのは片端からほどいて丸めて、次の妹の愛子にやるようにと片すみに重ねたが、その中には十三になる末の妹の貞世さだよに着せても似合わしそうな大柄おおがらなものもあった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
といいながら、羽被はっぴの紺のにおいの高くするさっきの車夫が、薄い大柄おおがらなセルの膝掛ひざかけを肩にかけたままあわてたように追いかけて来て、オリーヴ色の絹ハンケチに包んだ小さな物を渡そうとした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それにその表情ひょうじょうものごしがいかにも不思議ふしぎ……先方せんぽう丸顔まるがおわたくし細面ほそおもて先方せんぽう小柄こがらわたくし大柄おおがら外形がいけいはさまで共通きょうつう個所かしょがないにもかかわらず、何所どこともれず二人ふたりあいだ大変たいへんたところがあるのです。