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夜気
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やき
ふりがな文庫
“
夜気
(
やき
)” の例文
旧字:
夜氣
夜気
(
やき
)
沈々たる書斎の
中
(
うち
)
に
薬烟
(
やくえん
)
漲
(
みなぎ
)
り渡りて
深
(
ふ
)
けし
夜
(
よ
)
のさらにも深け渡りしが如き心地、何となく我身ながらも涙ぐまるるやうにてよし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
宛転悠揚
(
えんてんゆうよう
)
としてわたしの心を押し沈め、我れを忘れていると、それは豆麦や藻草の
薫
(
かおり
)
の
夜気
(
やき
)
の中に、散りひろがってゆくようにも覚えた。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
しかし暗夜は暗夜の徳あって、
孟子
(
もうし
)
のいわゆる「
夜気
(
やき
)
」は暗黒の
賜
(
たまもの
)
である。
古
(
いにしえ
)
の学者の言に、「
好悪
(
こうあく
)
の
良
(
りょう
)
は
夜気
(
やき
)
に
萠
(
きざ
)
す」と。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
霜を含んだ
夜気
(
やき
)
は池の水の様に
凝
(
こ
)
って、上半部を
蝕
(
く
)
い
欠
(
か
)
いた様な
片破
(
かたわ
)
れ月が、
裸
(
はだか
)
になった雑木の
梢
(
こずえ
)
に蒼白く光って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「また冷汗かかされぬうちに引揚げた方が賢明じゃ。——よい
夜気
(
やき
)
のう。今宵は快うやすまれるぞ。豊後! 馬!」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
濠ということばから思い出されたか、気がつくと、
伽藍
(
がらん
)
の天井高く、
夜気
(
やき
)
は
更
(
ふ
)
けて、遠くに、濠の蛙の声がする。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
湯気と
垢
(
あか
)
と、塗りつける化粧料と、体臭とがまざり合い、ひしめき合って窓から
夜気
(
やき
)
のなかに
融
(
と
)
けて行く。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
今は、ましてや真夜中に近い時刻であるので、構内は湖の底に沈んだように静かで、
霊魂
(
れいこん
)
のように
夜気
(
やき
)
が
窓硝子
(
まどガラス
)
を
透
(
とお
)
して室内に
浸
(
し
)
みこんでくるように思われた。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
死
(
し
)
んだやうな
夜気
(
やき
)
のなかに、
凝
(
こ
)
つて、ひとり
活
(
い
)
きて、
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
をかけた
友染
(
いうぜん
)
は、
被衣
(
かつぎ
)
をもるゝ
袖
(
そで
)
に
似
(
に
)
て、ひら/\と
青
(
あを
)
く、
其
(
そ
)
の
紫
(
むらさき
)
に、
芍薬
(
しやくやく
)
か、
牡丹
(
ぼたん
)
か、
包
(
つゝ
)
まれた
銀
(
しろがね
)
の
鍋
(
なべ
)
も
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「すぐ帰って来る。——浪さん、
夜気
(
やき
)
にうたれるといかん、早くはいンなさい!」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
いつのまにか空が曇り、霧のような雨が、しんとした
夜気
(
やき
)
をぬらしていた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この時この瞬間、
宛
(
さなが
)
ら風の如き裾の音高く、化粧の
香
(
か
)
を
夜気
(
やき
)
に放ち、
忽如
(
こつじよ
)
として街頭の
火影
(
ほかげ
)
に
立現
(
たちあらは
)
るゝ女は、これ
夜
(
よる
)
の魂、罪過と醜悪との
化身
(
けしん
)
に候。
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
三太郎のヘンな
啼
(
な
)
きごえに余一も咲耶子も、その時はじめて、
夜気
(
やき
)
のふかい
館
(
たち
)
のあなた、
外郭
(
そとぐるわ
)
のあたりにあたって、しずかな
変化
(
へんか
)
が
起
(
おこ
)
っているのに気がついた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
壁土
(
かべつち
)
のようなものがバラバラと落ち、ガラガラと
屋根瓦
(
やねがわら
)
が墜落すると、そのあとから、冷え冷えとする
夜気
(
やき
)
が入ってきた。漢青年はその
孔
(
あな
)
からヒラリと外に飛び出したのだった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まだ明りも
燈
(
とも
)
さず——
墨
(
すみ
)
のような
夜気
(
やき
)
をとざしたひと間に——かれは独り寂然と坐っていた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目黒の薄暗い鉄橋の上で、僕は暫く
夜気
(
やき
)
を湯あみした。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
墨
(
すみ
)
のような
夜気
(
やき
)
の真夜半。——王進はそっと室を這い出して、母の枕をゆり起した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜気
(
やき
)
の墨に吹かれさまよう姿は、ふと何かを、心あてに抱いたようだった。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“夜気”の意味
《名詞》
夜の静かな気配。
夜間の雑念のない清らかな心。
(出典:Wiktionary)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“夜”で始まる語句
夜
夜半
夜更
夜中
夜叉
夜具
夜鷹
夜寒
夜明
夜業