をし)” の例文
否、塵芥は至粋をとゞむるのちからなきなり、漁郎天人の至美を悟らずして、いたづらに天衣の燦爛さんらんたるををしむ、こゝに於てか天人に五衰の悲痛あり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
世上貫一のほかに愛する者無かりし宮は、その貫一と奔るをうべなはずして、わづかに一べつの富の前に、百年の契を蹂躙ふみにじりてをしまざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
醸家の水を貴び水を愛し水を重んじ水ををしむ、まことに所以ゆゑある也。剣工の剣を鍛ひて之をさいするや、水悪ければ即ち敗る。
(新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
幕の上に映つたアメリカの役者に、——しかも死んでしまつたヴアレンテイノに拍手を送つてをしまないのは相手を歓ばせる為でも何でもない。
想ふに羅馬市には、黄金こがね耳環みゝわを典して、客人をあがなひ取ることををしまざる人あるならん。拿破里ナポリ旅稼たびかせぎは、その後の事とし給はんもさまたげあらじ。
をしまず大工だいく泥工さくわんを雇ひ俄に假玄關かりげんくわんを拵らへ晝夜の別なく急ぎ修復しゆふくを加へ障子しやうじ唐紙からかみたゝみまで出來に及べば此旨このむね飛脚ひきやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし猶これを待つに読書家を以てするををしまなかつたことは、「贈瓊浦石崎君」の作に徴して知られる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
せぬ事うけ合なり 博物館にも名高き青磁など見るべきものあり是亦一見ををしむ勿れ お茶屋は瓢亭
京洛日記 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
手に手をとりくみて日を給ふが、つひ心神こころみだれ、生きてありし日にたがはずたはぶれつつも、其の肉の腐りただるるををしみて、肉を吸ひ骨をめて、四七はたくらひつくしぬ。
判事はあの欝陶うつたうしい部屋で、あの気色きしよく悪い人間の死をおとづれることを避ける為には、少くない金をもをしまなかつた。婚礼と新築祝ならいつでも行くんだけれど、俺は病人や葬式は真平だ。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
曲馬組のかしらマツテオ・カスペリイニイはけふひどく貧民に同情して、大抵晩の興行に出して、金を倍払ふお客様に見せる程の物は、をしまずに午後の興行にも出す。それ丈の事は別に苦にせずに出来る。
防火栓 (新字旧仮名) / ゲオルヒ・ヒルシュフェルド(著)
神のさづけ松明たいまつをしむな。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
若し彼の風狂を「とり乱してゐる」と言ふ批評家でもあれば、僕はこの批評家に敬意を表することををしまないであらう。
続芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かのともがらは貧き人に逢ふときは物取らせてをしむことなし。かの輩は債あるときは期をあやまたず額をたがへずして拂ふなり。
夫婦は心をあはせて貫一の災難をかなしみ、何程のつひえをもをしまず手宛てあての限を加へて、少小すこしきずをものこさざらんと祈るなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
講談を読むものは新作小説を読まない。読まざる所のものは其人の無用とする所である。しかし其人は己に無用なるものが或は人に有用なるものたるべきを容認することををしまない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
呼出よびいだしなば手懸にも相成べし此旨心得置べし此度の儀は國家こくかの一大事家の安危あんきなるぞ急げ/\途中は金銀ををしむな喩にも黄金とぼしければ交りうすしと云へり女子によしと小人は養ひ難しとの聖言せいげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
和尚は人に求められゝば是非無いから吾が有つてゐる者ををしみはしないが、人からは何をも求めまいといふやうな態度で、別に雑話を聞き度くも聞かせ度くも思つて居らぬ風で、食事が済んで後
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
今は呵責をも苦艱くげんをもあへにくまざるべき覚悟の貫一は、この信用のつひには慾の為にがれ、この憐愍れんみんも利の為にをしまるる時の目前なるべきを固く信じたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其処へ幸福なるブウルヂヨアの家庭は教養の機会を与へるのに殆ど何ものをもをしまなかつた。今試みに巽斎自身のその間の消息をもの語つた伝記の数節を抄記すれば、——
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)