台湾たいわん)” の例文
台湾たいわんの中央山脈を測量した時などは、蛮人百二十名巡査十五名を従え軍隊組織で行列二里にわたり、四日間の露営をしたそうであるが
地図をながめて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
むかし、台湾たいわんの南のはじの要害の地に、支那しなの海賊がやつてきて、住居すまひをかまへましたので、附近の住民はたいへん困りました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
当時兄貴は台湾たいわんのほうで、よくよく旅で困りもしたろうが、しかもそれが二度目の無心で、私としてはずいぶん無理な立場に立たせられた。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
数年前には台湾たいわんより多量のバナナが日本の内地に輸入せられ、大きなかごに入れたまま、それが神戸港こうべこうなどに陸上りくあげせられた時はまだ緑色であった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
川岸かし女郎じょろうになる気で台湾たいわんへ行くのアいいけれど、前借ぜんしゃく若干銭なにがしか取れるというような洒落た訳にゃあ行かずヨ、どうも我ながら愛想あいその尽きる仕義だ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
愛玉只は、黄色味を帯びた寒天様のもので、台湾たいわん無花果いちじゅくの実をつぶして作るのだそうだが、それをさいの目に切ったのの上に砂糖水、氷をかけて食う。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
其れから明治廿九年乃木中将が台湾たいわん総督そうとくとなる時、母堂が渡台の御暇乞に参内さんだいして、皇后陛下の御問に対し、ばばは台湾の土にならん為、せがれ先途せんどを見届けん為に台湾にまいります
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「きょうは君にごちそうがあるぞ、この間台湾たいわんの友人からザボンを送ってくれてな。」
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
また台湾たいわんあたりの高山こうざん自生じせいするといういとのようにほそいもの、もしくは、支那しな奥地おくちにあるという、きわめてあつくてひろいもの、そして、九州きゅうしゅうあたりから、四こく地方ちほうやまには
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すぐ町つづきの港には、支那や台湾たいわんへ行く大きな汽船が毎日出入りしていますし、昔のオランダ屋敷の跡だとか、古い古いキリスト教の会堂だとか、支那人の建てた妙な形の寺院だとか
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さて、このきはだやかじきというやつも、東京には年中あるようなものだが、十二月より三月ごろにかけてあるものは、おおむね台湾たいわんからやってくるので、いわゆる江戸前えどまえ美味うまさはない。
鮪を食う話 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
しばしば台湾たいわんを旅行するに、その進歩の顕著けんちょなるに驚く。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かつて亀戸かめどもり隅田すみだきしに、また朝鮮てうせん台湾たいわん満州まんしう
ぼくは去年の今ごろ、台湾たいわんの方へ旅行をした。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
現在の日本はカラフト国境から台湾たいわんまで連なる島環の上にあって亜熱帯から亜寒帯に近いあらゆる気候風土を包含している。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ひとこえきたいとおもえばラジオがあるし、カナリヤは、一にちじゅうこのまどでさえずっているし、ここは、まえうみだから、台湾たいわん上海シャンハイ、ハワイ、どこのラジオもるようにはいってくるのだ。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
測夫の一人はもう四十年も昔からこの仕事をつづけているそうで、北はカラフトから南は台湾たいわんまで足跡を印しない土地は少ないのだそうである。
小浅間 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
実際千島ちしまカラフトの果てから台湾たいわんの果てまで数えれば、気候でもまず文化民の生活に適する限り一通りはそろっている。
カメラをさげて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それでこれらもすべて現在の確実な事実としての名だけを採る事にする。千島の分だけはいろいろの困難があるので除き、また台湾たいわん朝鮮ちょうせんも除く事とする。
火山の名について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
台湾たいわんのある地方では鉄筋コンクリート造りの鉄筋がすっかり腐蝕ふしょくして始末に困っているという話である。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
雁来紅かりそめのくちべに」という奇妙な映画で、台湾たいわんの物産会社の東京支店の支配人が、上京した社長をこれから迎えるというので事務室で事務成績報告の予行演習をやるところがある。
映画雑感(Ⅳ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
北海道や朝鮮ちょうせん台湾たいわんは除外するとしても、たとえば南海道九州の自然と東北地方の自然とを一つに見て論ずることは、問題の種類によっては決して妥当であろうとは思われない。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
最近の例としては台湾たいわんの地震がある。台湾は昔から相当烈震の多い土地で二十世紀になってからでもすでに十回ほどは死傷者を出す程度のが起こっている。平均で言えば三年半に一回の割である。
災難雑考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
台湾たいわんでは約三十一方里、カラフトでは約二十一方里ぐらいに当たる。
地図をながめて (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
マライを手始めに、アイヌや、蒙古もうこ、シナ、台湾たいわんなどと当たってみると、もちろんかなり関係のありそうな形跡は見えるが常識的に予期されるほどに密接とも思われないのをかえって不思議に思った。