剽輕へうきん)” の例文
新字:剽軽
三吉は三升樽をブラ下げて、ともしやがみました。五十六七、すつかり月代さかやきが色付いて、鼻も眼も口もしなびた、剽輕へうきんな感じのする親爺です。
大豆打でえづぶちにかつころがつたてえに面中つらぢうめどだらけにしてなあ」剽輕へうきん相手あひてます/\惡口あくこうたくましくした。群衆ぐんしふ一聲ひとこゑをはごとわらひどよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この居士こじやまてもう二ねんになるとかいふはなしであつた。宗助そうすけはそれから二三にちして、はじめてこの居士こじたが、かれ剽輕へうきん羅漢らかんやうかほをしてゐる氣樂きらくさうなをとこであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かゝる樣々さま/″\出來事できごとあひだ吾等われら可憐かれんなる日出雄少年ひでをせうねんは、相變あひかはらず元氣げんきよく始終しじゆう甲板かんぱん飛廻とびまはつてうちに、ふとリツプとかふ、英吉利イギリスきはめて剽輕へうきん老爺をやぢさん懇意こんいになつて
夫れでも龍華寺はまだ物が解つて居るよ、長吉と來たら彼れははやと、生意氣に大人の口を眞似れば、お廢しよ正太さん、子供の癖にませた樣でをかしい、お前は餘つぽど剽輕へうきんものだね
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
八五郎の剽輕へうきんな調子にさそはれるやうに、身扮みなりつた、色の淺黒い、キリリとした若いのが、少し卑屈ひくつな態度で、恐る/\入つて來ました。
「どうれ、けえつて牛蒡ごぼうでもこせえべえ、明日あした天秤棒てんびんぼうかついで支障さはりにならあ」剽輕へうきん相手あひておもしたやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きしくさなかかはづ剽輕へうきんそのはないて、それからぐつとうしろあしみづいてむかふきしいてふわりといたまゝおほきなみはつてこちらをる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
平次はさう言ひ乍らも、この剽輕へうきんな男、——ガラツ八の駈けて行く後姿を見て居りました。
娘の後ろから顏を出したのは、火傷だらけの三十男、少し剽輕へうきんさうなのもあはれです。
大工の金五郎はこんな時にも江戸つ兒らしい剽輕へうきんさを失ひませんでした。
八五郎は船を漕ぐ眞似なんかして、剽輕へうきんな聲を張り上げました。