“兀(はげ)” の例文
其(そ)の口(くち)へ、——忽(たちま)ちがつちりと音(おと)のするまで、丼(どんぶり)を当(あ)てると、舌(した)なめずりをした前歯(まへば)が、穴(あな)に抜(ぬ)けて、上下(うへした)おはぐろの兀(はげ)まだら。……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
邪見(じゃけん)な口のききようだねえ、阿魔だのコン畜生だの婆だのと、れっきとした内室(おかみさん)をつかめえてお慮外(りょがい)だよ、兀(はげ)ちょろ爺(じじい)の蹙足爺(いざりじじい)め。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
新「なに、此畜生め、オイ頭の兀(はげ)てる所(とこ)を打(ぶ)つと、手が粘って変な心持がするから、棒か何か無(ね)えか、其処(そこ)に麁朶(そだ)があらア、其の麁朶を取ってくんな」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此人(このひと)始(はじ)めは大藏省(おほくらしやう)に月俸(げつぽう)八圓(ゑん)頂戴(ちようだい)して、兀(はげ)ちよろけの洋服(ようふく)に毛繻子(けじゆす)の洋傘(かうもり)さしかざし、大雨(たいう)の折(をり)にも車(くるま)の贅(ぜい)はやられぬ身成(みなり)しを、一念(ねん)發起(ほつき)して帽子(ぼうし)も靴(くつ)も取(と)つて捨(す)て
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
頭はスツカリ兀(はげ)て了ツて、腦天のあたりに鳥の柔毛(にこげ)のやうな毛が少しばかりぽツとしてゐる。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
……従って少年たちは、建具屋と鉄葉屋(ブリキや)の弟子だから印半纏腹掛(しるしばんてんはらがけ)ででもいるか、と思うと、兀(はげ)ちょろけた学生服、徽章無(きしょうなし)の制帽で。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新吉は家(うち)へ帰ると女房が、火傷の痕(あと)で片鬢(かたびん)兀(はげ)ちょろになって居り、真黒な痣(あざ)の中からピカリと眼が光るお化(ばけ)の様な顔に、赤ん坊は獄門の首に似て居るから、新吉は家へ帰り度(た)い事はない。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
揃って、むら兀(はげ)の白粉(おしろい)が上気して、日向(ひなた)で、むらむらと手足を動かす形は、菜畠(なばたけ)であからさまに狐が踊った。チャンチキ、チャンチキ、田舎の小春の長閑(のどけ)さよ。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二十一二になる色盛(いろざかり)の娘、顔にポツリと腫物(できもの)が出来ましても、何うしたら宜(よ)かろうなどと大騒ぎを致すものでございますのに、お累は半面紫色に黒み掛りました上、片鬢(かたびん)兀(はげ)るようになりましたから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と初々(ういうい)しいほど細い声を掛けると、茶の間の悪く暗い戸棚の前で、その何かしら——内臓病者補壮の食はまだ考えない、むぐむぐ頬張っていた士族兀(はげ)の胡麻塩(ごましお)で
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こっちから……脚の方から入りましてね、いま、貴方が掛けておいでなすったその松の坊主頭——坊主じゃないんですけれど、薄毛がもやもやとして、べろ兀(はげ)の大(おおき)い円いの。
ッて、兀(はげ)の親仁様(おとっさん)が言ったんですけど、——あなた、天狗にお友だちッてあるんでしょうか。
万世橋向うの——町の裏店(うらだな)に、もと洋服のさい取を萎(なや)して、あざとい碁会所をやっていた——金六、ちゃら金という、野幇間(のだいこ)のような兀(はげ)のちょいちょい顔を出すのが、ご新姐、ご新姐という
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぺろ兀(はげ)の爺(じい)さんが、肥(ふと)った若い妓(こ)にしなだれたのか、浅葱(あさぎ)の襟をしめつけて、雪駄(せった)をちゃらつかせた若いものでないと、この口上は——しかも会費こそは安いが、いずれも一家をなし、一芸に
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある、その、安待合の女房が、餡子入(あんこいり)の大廂髪(おおひさし)で、その頃はやった消炭色(けしずみいろ)紋付の羽織の衣紋(えもん)を抜いたのが、目のふちに、ちかちかと青黒い筋の畳まるまで、むら兀(はげ)のした濃い白粉(おしろい)、あぶらぎった面(つら)で
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻の下をなお伸(のば)して、もう一息、兀(はげ)の頂辺(てっぺん)へ扇子を翳(かざ)して
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)