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ふりがな文庫
“
他事
(
ひとごと
)” の例文
深草の里に老婆が物語、聞けば
他事
(
ひとごと
)
ならず、いつしか身に振りかゝる哀の露、
泡沫夢幻
(
はうまつむげん
)
と悟りても、今更ら驚かれぬる世の
起伏
(
おきふし
)
かな。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
それも、もう
他事
(
ひとごと
)
ではない、既に今朝の雪の朝茶の子に、肝まで抜かれて、ぐったりとしているんだ。聞けば聞得で、なお有難い。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あんな小僧っ子の事で、何だ、グズグズ気をとられてるなんて、
他事
(
ひとごと
)
じゃねえや、こちとらの事だ。間誤ついてると、細く短くなっちゃうぞ
乳色の靄
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
いよいよあの古い歴史のある青山の家も傾いて来て、没落の運命は避けがたいかもしれないということは、彼にとって
他事
(
ひとごと
)
とも思われなかった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
今
(
いま
)
其
(
その
)
美
(
うる
)
はしく
殊勝
(
けなげ
)
なる
夫人
(
ふじん
)
が、
印度洋
(
インドやう
)
の
波間
(
なみま
)
に
見
(
み
)
えずなつたと
聞
(
き
)
いては、
他事
(
ひとごと
)
と
思
(
おも
)
はれぬと、そゞろに
哀
(
あわれ
)
を
催
(
もよう
)
したる
大佐
(
たいさ
)
は、
暫時
(
しばらく
)
して
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
いた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
日に日に損なわれて行くわが健康を意識しつつ、この姉に養生を勧める健三の心の
中
(
うち
)
にも、「
他事
(
ひとごと
)
じゃない」という馬鹿らしさが遠くに働らいていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わたくし
)
は
他事
(
ひとごと
)
とは云いながら、命の恩人の
敵
(
かたき
)
、すぐに飛びかゝろうかと思いましたが、先は剣術
遣
(
つか
)
い、女の
痩腕
(
やせうで
)
でなまじいな事を
仕出来
(
しでか
)
して取逃すような事がありましては
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
決してまた
他事
(
ひとごと
)
でなく、自分が十二歳の時に
蔵前
(
くらまえ
)
の師匠の家に行き、年季奉公を致した時から以来のことなども思い合わされ、多少の感慨なき
能
(
あた
)
わずともいわばいわれます。
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
しかし、幾度も不幸を眼前に見て来た村の人たちは、
他事
(
ひとごと
)
とは思えないので、その老人に思いとどまるように忠告する者もあったが、老人は一笑に附して頭から取りあげなかった。
位牌田
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
兵部大輔にとつても、此だけは
他事
(
ひとごと
)
ではなかつた。おなじ大伴幾流の中から、四代続いて氏
ノ
上職を持ち
堪
(
こた
)
へたのも、第一は宮廷の思召しもあるが世の中のよせが重かつたからだ。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
と寛一君は
他事
(
ひとごと
)
だから冷静を失わない。成功すれば纒まり失敗すれば
破
(
こわ
)
れると信じて、無論前者を望んでいる。それは然うと、宮地さんの出入する家庭は縁談進行中と認められる。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
しかし、それは
他事
(
ひとごと
)
ではありません。今度は私自身がその仕舞図を描くことになったのですから、そんな前車の
轍
(
てつ
)
をふまないように注意しなくてはいけないと思って緊張しているのです。
謡曲仕舞など:――文展に出品する仕舞図について――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
長三郎は
他事
(
ひとごと
)
でも訊かれたやうな軽い調子で答へた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自分の事も
他事
(
ひとごと
)
も、忘れ忘れていつ迄も
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
他事
(
ひとごと
)
ながらいたわしくて、記すのに筆がふるえる、
遥々
(
はるばる
)
と
故郷
(
おくに
)
から引取られて出て来なすっても、不心得な小説孫が、
式
(
かた
)
のごとき
体装
(
ていたらく
)
であるから
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると森本もまるで
他事
(
ひとごと
)
のように同じく大きな声を出して笑い始めたが、それがすむと、急に
真面目
(
まじめ
)
になって、敬太郎の口を抑えるような手つきをした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
平素懇意にする金兵衛が六十三歳でこの打撃を受けたということは、寛斎にとって
他事
(
ひとごと
)
とも思われない。今一通の手紙は
旧
(
ふる
)
いなじみのある老人から来た。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
兵部大輔にとっても、此はもう、
他事
(
ひとごと
)
ではなかった。おなじ大伴幾流の中から、四代続いて氏上職を持ち
堪
(
こた
)
えたのも、第一は宮廷の御恩徳もあるが、世の中のよせが重かったからである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
お種は弟を顧みて、「三吉、お前は私のことを……
旦那
(
だんな
)
に逢って見る積りで、今度出て来たんだろうなんて、そう言ったそうなネ……」と
他事
(
ひとごと
)
のように言った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「しかし
他事
(
ひとごと
)
じゃないね君。その実僕も青春時代を全く牢獄の
裡
(
うち
)
で暮したのだから」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
海は深くて、その男の
死骸
(
しがい
)
は揚らなかったとか。この話を聞いた時は、山本さんは
他事
(
ひとごと
)
とも思えなかった。
可恐
(
おそろ
)
しく成って、お新を連れて、国府津行の汽船の方へと急いだ。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
終
(
しまひ
)
にはあの『ざまあ見やがれ』の一言を思出すと、
慄然
(
ぞつ
)
とする
冷
(
つめた
)
い
震動
(
みぶるひ
)
が
頸窩
(
ぼんのくぼ
)
から背骨の髄へかけて流れ下るやうに感ぜられる。今は
他事
(
ひとごと
)
とも思はれない。
噫
(
あゝ
)
、丁度それは自分の運命だ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
年をとるなんて、相川に言わせると、そんなことは
小欠
(
おくび
)
にも出したくなかった。昔の
束髪連
(
そくはつれん
)
なぞが
蒼
(
あお
)
い顔をして、
光沢
(
つや
)
も失くなって、まるで
老婆然
(
おばあさんぜん
)
とした
容子
(
ようす
)
を見ると、
他事
(
ひとごと
)
でも腹が立つ。
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
大日向の運命は
軈
(
やが
)
てすべての穢多の運命である。思へば
他事
(
ひとごと
)
では無い。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
震災後一年に近い地方の人たちにとって、この
報知
(
しらせ
)
は全く
他事
(
ひとごと
)
ではなかった。もっとも、馬籠のような山地でもかなりの強震を感じて、最初にどしんと来た時は皆
屋外
(
そと
)
へ飛び出したほどであった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“他事”の意味
《名詞》
他の事柄。当人には関係のないこと。
(出典:Wiktionary)
他
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
事
常用漢字
小3
部首:⼅
8画
“他”で始まる語句
他
他人
他所
他人事
他家
他愛
他処
他国
他目
他所行