五歳いつゝ)” の例文
つい此の小僧に心が引かされて、お兄様やお母様に不孝を致します、せめて此の與之助が四歳よっつ五歳いつゝに成ります迄何卒どうぞお待ち遊ばして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これが又一層不便ふびんを増すの料となつて、孫や孫やと、その祖父祖母の寵愛はます/\太甚はなはだしく、四歳よつ五歳いつゝ六歳むつは、夢のやうにたなごころの中に過ぎて、段々その性質があらはれて来た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
五歳いつゝばかりをかしらに、三人の女の児は母親に倚添よりそつて、恥かしがつてろく御辞儀おじぎも為なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其旦那樣はまだお歸りにならぬといふ事で、五歳いつゝ許りの、眼のキョロ/\した男の兒が、奧樣の傍に横になつて、何やら繪のかいてある雜誌を見つゝ、時々不思議相にお定を見てゐた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あぶ、あぶ、あツぷう。」と、まるつらを、べろりといたいけなでて、あたまからびたしづくつたのは、五歳いつゝばかりの腕白わんぱくで、きよろりとしたでひよいとて、また父親おやぢ見向みむいた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五歳いつゝ六歳むつになるまでと云ふもの、まるで薬と御祈祷ごきたうで育てられたからだだ——江戸の住居も最早もうお止めよ、江戸はちりごみの中だと云ふぢや無いか、其様そんな中に居る人間に、どう満足ろくなもののはずは無い
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
五歳いつゝの鶴子初めて鴎を見て曰く、阿母おかあさん、白い烏が飛んで居るわねえ。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
五歳いつゝに満たぬアウギユスト
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いてましたる子供こぞうが、五歳いつゝ六歳位むツつぐらゐ色白いろじろの、二重瞼ふたへまぶた可愛かあいらしい子でございまするが、生来はらからの乞食こじきでもありますまいが、世の中の開明かいめいれて、ぜん
細君は庭の片隅に立つて、腰のところへ左の手をあてがひ乍ら、さも/\つまらないと言つたやうな風に眺めた。泣いて屋外そとから入つて来たのは、斯の細君の三番目の児、お末と言つて、五歳いつゝに成る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何処どこの田舎だかおらア知らねえ、何でもおれ五歳いつゝの時田舎から出て、神田の三河町へ荒物みせを出すと間もなく、寛政九年の二月だと聞いているが、其の時の火事に全焼まるやけになって
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
雨戸あまどを引いて外の格子かうしをがらがらツと明けまして燈明あかり差出さしだして見ると、見る影もない汚穢きたな乞食こじき老爺おやぢが、ひざしたからダラ/″\血の出る所をおさへてると、わづ五歳いつゝ六歳むツつぐらゐの乞食こじき