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中年増
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ちうどしま
齒を
染めた、
面長の、
目鼻立はつきりとした、
眉は
落さぬ、
束ね
髮の
中年増、
喜藏の
女房で、お
品といふ。
中に
挾まれたのは、
弱々と、
首の
白い、
髮の
濃い、
中年増と
思ふ
婦で、
兩の
肩がげつそり
痩せて、
襟に
引合せた
袖の
影が——
痩せた
胸を
雙の
乳房まで
染み
通るか、と
薄暗く、
裾をかけて
あの
坂の
上り
口の
所で、
上から
來た
男が、
上つて
行く
中年増の
媚かしいのと
行違つて、
上と
下へ五六
歩離れた
所で、
男が
聲を
掛けると、
其の
媚かしいのは
直ぐに
聞取つて、
嬌娜に
振返つた。
虹に
乘つた
中年増を
雲の
中へ
見失つたやうな、
蒋生其の
時顏色で、
黄昏かゝる
門の
外に、とぼんとして
立つて
見たり、
首だけ
出して
覗いたり、ひよいと
扉へ
隱れたり、しやつきりと
成つて
引返したり