上役うわやく)” の例文
自分にしても、し会社の上役うわやくに会って誘われゝば、矢張り同じような態度を取るかも知れないと思って、宥恕ゆうじょすることに努めた。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同僚どうりょう上役うわやくの評判は格別いと言うほどではない。しかしまた悪いと言うほどでもない。まず平々凡々たることは半三郎の風采ふうさいの通りである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
デパートの上役うわやくに、このことを知らせますと、デパートじゅうが、大さわぎになり、警官がかけつけましたが、すべて、もう、手おくれでした。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
では、つま子供こどもらにたいして、厳格過げんかくすぎるといってもいいのに、上役うわやくいえでは、やんちゃ坊主ぼうず脊中せなかせて、馬替うまがわりとなってあるきます。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
さてこの奇談が阿部邸の奥表おくおもて伝播でんぱして見ると、上役うわやくはこれをて置かれぬ事と認めた。そこでいよいよ君侯にもうして禄をうばうということになってしまった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
作「うん、下役したやくのお方だが、今度の事に就いては其の上役うわやくお作事奉行が来て居ますよ、有難い事だのう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たいへんまれであって、彼等の多くは、たまたま職業を其処にみいだしたのであって、それから後は無論のこと職業意識をもって説教をし、燃えるような野心をもって上役うわやく後釜あとがまねら
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
十歳とをばかりのころまでは相應さうおう惡戯いたづらもつよく、をんなにしてはと母親はゝおや眉根まゆねせさして、ほころびの小言こごとも十ぶんきしものなり、いまはゝ父親てゝおや上役うわやくなりしひとかくづまとやらおめかけとやら
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いくら手向っても上役うわやくの旦那方にうけのいいのがこっちの因果。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
お命じつけなされたほうがよろしかろうと、拙者愚考ぐこういたし、係の者まで、それとなく申し入れましたところ、上役うわやくのお言葉さえあればとのこと、元より拙者、役目違いの儀は重々存じおりますなれど……
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
佐々木は彼の上役うわやくであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まだしゃでは、それでもいいが、おとこは、ときどき上役うわやく家庭かていへも、ごきげんをうかがいになければなりません。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
男はすこしもさわがず、まるで上役うわやくが部下をしかるようなちょうしで、警官をだまらせておいて、はがいじめにされたまま、いそいで建物のそばをはなれていくのです。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なんでもこの記事に従えば、喪服もふくを着た常子はふだんよりも一層にこにこしていたそうである。ある上役うわやくや同僚は無駄むだになった香奠こうでんを会費に復活祝賀会を開いたそうである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あれを言ってはほか役人の身の上にもかゝわるだろうと深く思いすぐして、隠し立てを致すと却って為にならんぞ、定めし上役うわやくの者が其の方に折入おりいって頼んだ事も有るであろうが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いや。それは知らぬと言うじゃろう。上役うわやくのものは全く知らぬかも知れぬ。とにかくあの者どもは早くここを立たせるがよい。土地のものと文通などをいたさせぬようにせい」
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
スイッチ盤のまえにいた刑事が、上役うわやくたちの顔を見まわして、ひくい声でたずねました。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
風彩ふうさいからいえば、そのおとこのほうが、上役うわやくよりりっぱでした。頭髪とうはつをきれいにけ、はいているくつもかけるまえに、あわれな細君さいくんねんをいれてみがいたので、ぴかぴかとひかっています。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
太郎兵衛は明日みょうにちの夕方までさらすことになっている。刑を執行するまでには、まだ時がある。それまでに願書がんしょを受理しようとも、すまいとも、同役に相談し、上役うわやくに伺うこともできる。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
上役うわやくや同僚は未亡人びぼうじん常子にいずれも深い同情をひょうした。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また同僚どうりょうが、むやみと上役うわやくたいして、機嫌きげんをうかがうのを軽蔑けいべつしながら
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)