三分さんぶ)” の例文
盗人ぬすびとにも三分さんぶの道理といいますけれどもこの男のは八分位の道理はあるのです。どうも貧民はラサ府では実に困難です。餓鬼がきの国という批評はよくあたって居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
半纏はんてん股引ももひき腹掛はらがけどぶから引揚げたようなのを、ぐにゃぐにゃとよじッつ、巻いつ、洋燈ランプもやっと三分さんぶしん黒燻くろくすぶりの影に、よぼよぼしたばあさんが、頭からやがてひざの上まで
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「今月すえにはきっと返す。それで好かろう」と浅井君は顔を寄せて来る。小野さんは口から煙草を離した。指のまたに挟んだまま、一振はたくと三分さんぶの灰は靴の甲に落ちた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
到底とうてい起きる気がしないから、横になったまま、いろいろ話していると、彼が三分さんぶばかりのびたひげの先をつまみながら、僕は明日あす明後日あさって御嶽みたけへ論文を書きに行くよと云った。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あるに甲斐かいなく世をれば貧には運も七分しちぶこおりて三分さんぶの未練を命にいきるか、ああばかりに夢現ゆめうつつわかたず珠運はたんずる時、雨戸に雪の音さら/\として、火はきえざる炬燵こたつに足の先つめたかりき。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは、たしかに、盗人の三分さんぶの理にも似ているが、しかし、私の胸の奥の白絹に、何やらこまかい文字が一ぱいに書かれている。その文字は、何であるか、私にもはっきり読めない。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
恐くは外に三分さんぶわづらひて、内にかへつて七分しちぶを憂ふるにあらざらんや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三分さんぶばかりの朱をば擦る
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いとなむがうへれは本家ほんけとてもちひもおもかるべくわれとて信用しんよううすきならねど彼方かなた七分しちぶえきあるときこゝにはわづかに三分さんぶのみいへ繁榮はんえい長久ちやうきうさく松澤まつざはきにしかずつはむすめ容色きりやうすぐれたればこれとてもまたひとつの金庫かねぐら芳之助よしのすけとのえにしえなばとほちやうかど地面ぢめん持參ぢさんむこもなきにはあらじ一擧兩得いつきよりやうとくとはこれなんめりとおもこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
上下うへした天守てんしゆ七分しちぶ青年わかもの三分さんぶ見較みくら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)