鵞毛がもう)” の例文
さみしそうに笑って、……雪道を——(ああ、ふったる雪かな、いかに世にある人の面白う候らん、それ雪は鵞毛がもうに似て、)
うそさぶしとひしも二日ふつか三日みつか朝來あさよりもよほす薄墨色うすずみいろ空模樣そらもやう頭痛づつうもちの天氣豫報てんきよはう相違さうゐなく西北にしきたかぜゆふぐれかけて鵞毛がもう柳絮りうじよかはやちら/\とでぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつか焚火も踏み消され、川面を渡って吹き上がる嵐に、蹴散らされた雪が鵞毛がもうの如く、濛々もうもうと四方に渦を巻く。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
勿論もちろん旋風つむじかぜつねとて一定いつてい方向ほうかうはなく、西にしに、ひがしに、みなみに、きたに、輕氣球けいきゝゆうあだか鵞毛がもうのごとく、天空てんくうあがり、さがり、マルダイヴ群島ぐんたううへなゝめ
雪の降るのを飛絮ひじょの如しとか鵞毛がもうの如しとか形容するは面白いが科学的ではない。
雪の話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
折ふし、十月の空は灰いろに閉じて、鵞毛がもうのような雪が紛々ふんぷんと天地に舞っていた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鵞毛がもうのやうにゆききする 風にさそはれて朝化粧あさげしやうする薔薇の花。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
足拍子踏んで大手を拡げ、さっ退いて、と進む、きこといなずまのごとき時あり、見物は喝采かっさいしき。かろきこと鵞毛がもうのごとき時あり、見物は喝采しき。重きこと山のごとき時あり、見物は襟を正しき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鵞毛がもうへい
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とて取次とりつふみおもりてもなみだほろほろひざちぬ義理ぎりといふものかりせばひたきこといとおほわかれしよりの辛苦しんく如何いかときはあらぬひとまられてのがればのかりしときみさをはおもしいのち鵞毛がもうゆきやいばりしこともありけり或時あるときはお行衛ゆくゑたづねわびうらみは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)