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うっせき
ふりがな文庫
“
鬱積
(
うっせき
)” の例文
命から二番目の一刀——来国俊を侮辱された憤懣の黒雲が、若い七之助の胸一杯に
鬱積
(
うっせき
)
して、最早最後の分別も無くなった様子です。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
劣等感が
鬱積
(
うっせき
)
して、そのことだけのために、ついに殺意を抱き、大胆不敵のアリバイ・トリックを案出して、殺人罪を犯すのである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
数年来
鬱積
(
うっせき
)
沈滞せる者
頃日
(
けいじつ
)
漸
(
ようや
)
く出口を得たる事とて、
前後
(
ぜんご
)
錯雑
(
さくざつ
)
序次
(
じょじ
)
倫
(
りん
)
なく
大言
(
たいげん
)
疾呼
(
しっこ
)
、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
尊王攘夷と開港佐幕と、昨是今非の紛々たる声に交って、黒船来の恐怖心が加わった、地に
鬱積
(
うっせき
)
している不安動揺の声なのである。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お作が愚痴を
零
(
こぼ
)
し出すと、新吉はいつでも鼻で
遇
(
あしら
)
って、相手にならなかったが、自分の胸には、お作以上の不平も
鬱積
(
うっせき
)
していた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
痛快極まる勝ち戦は、張飛の
鬱積
(
うっせき
)
を吹きとばして、なおあまりがあった。早速に早馬を仕立てさせ、使者を成都の玄徳に送った。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱積
(
うっせき
)
した活力が充分に発現されないために起こる病的現象だとすると、前の仮説の領域から全く離れたものとは思われない。
笑い
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
痩馬は荷が軽るくなると
鬱積
(
うっせき
)
した怒りを一時にぶちまけるように
嘶
(
いなな
)
いた。遙かの遠くでそれに
応
(
こた
)
えた馬があった。跡は風だけが吹きすさんだ。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
芝居の正義というのは道徳的な本道の正義でなくともよいので、何にしても
鬱積
(
うっせき
)
した気持ちを打ち払う様な華々しいものが、正義になるのである。
役者の一生
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
その予想外に
酸鼻
(
さんび
)
な場面と、
鬱積
(
うっせき
)
する異臭にとつじょ直面したため、思わずみんな一個所にかたまって
嘔吐
(
おうと
)
したという。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
それに引きかえ、実に妾はこの四五日なんとなく肩の
凝
(
こ
)
りが
鬱積
(
うっせき
)
したようで、唯に気持がわるくて仕方がなかった。
三人の双生児
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自然主義発生当時と同じく、今なお理想を失い、方向を失い、出口を失った状態において、長い間
鬱積
(
うっせき
)
してきたその自身の力を独りで
持余
(
もてあま
)
しているのである。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
私のうちにようやく浅草に対する一種の
郷愁
(
きょうしゅう
)
的感情が
鬱積
(
うっせき
)
してきた。またぞろ浅草へ行きたくなった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
たえず自制していたので、また
頑強
(
がんきょう
)
な力が
鬱積
(
うっせき
)
して少しも費やされなかったので、そのためにいらだってきた。するともうどんな馬鹿げた事でもやりかねなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
何でもいいから手当り次第に投げ散して
鬱積
(
うっせき
)
した心の蒸汽を狂的に
洩
(
もら
)
さずにはいられないのである。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
一種の電磁力
鬱積
(
うっせき
)
のエネルギー放出に外ならず、実はそれが果して人のいう詩と同じものであるかどうかさえ今では自己に向って確言出来ないとも思える時があります。
詩について語らず:――編集子への手紙――
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
この東北地方の豊潤な実勢力が
鬱積
(
うっせき
)
されているのだが、仙台は
所謂
(
いわゆる
)
文明開化の表面の威力でそれをおさえつけ、びくびくしながら君臨しているというような感じがした。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それが階級的な
搾取
(
さくしゅ
)
や抑圧からくるものであれ、大衆の欲望の禁圧からくるものであれ、要するに社会的不満が
鬱積
(
うっせき
)
し、または諸種の要因で社会的変化が進行しているのに
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
毒々しい
侮蔑
(
ぶべつ
)
の念が激しく
鬱積
(
うっせき
)
していたので、若々しい——時としてはあまりに若々しい神経質なところがあるにもかかわらず、彼は町中でそのぼろ洋服を恥じようなどとは
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
鬱積
(
うっせき
)
せる胸中の
煩悶
(
はんもん
)
の、その一片をだにかつて
洩
(
もら
)
せしことあらざりしを、いま打明くることなれば、順序も、次第も前後して、乱れ且つ整わざるにも心着かで、再び語り続けたり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それだけ千万無量の思いが胸に
鬱積
(
うっせき
)
している訳で、今
図
(
はか
)
らずも塚本に出遭ってみると、やれやれこの男に少しは切ない心の中を聞いて
貰
(
もら
)
おう、そうしたら幾らか気が晴れるだろうと
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その性質の
磊落
(
らいらく
)
なる、光明なる、大胆なる、その百難を
排
(
おしひら
)
きて屈せざる、その信ずる所を執りて移らざる、その道念の
鬱積
(
うっせき
)
したる、その信念の堅確なる、その宗教的神秘の心情を有する
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼の胸中にあるモヤモヤと
鬱積
(
うっせき
)
したものを書き現わすことの要求のほうが、在来の史書に対する批判より先に立った。いや、彼の批判は、自ら新しいものを
創
(
つく
)
るという形でしか現われないのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
女にもてたことのない醜男の胸中には、若年から人知れぬ
鬱積
(
うっせき
)
があるらしく、師直の胸中にも多年「……時をえたら」とする念がひそんでいた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自己の作品を公衆に展示する事によって何か内に
鬱積
(
うっせき
)
するものを世に訴え、外に発散せしめる機会を得るという事も美術家には精神の助けとなるものだと思うのであるが
智恵子の半生
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
すなわち、がちゃーんの音を聞く瞬間、光枝の胸の中に
鬱積
(
うっせき
)
した不満感といったようなものが、一時的ではあったが、たちまち
雲散霧消
(
うんさんむしょう
)
してしまうのを感じたことであった。
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
成就せしめんとする
大檀那
(
おおだんな
)
は天下一人もなく数年来
鬱積
(
うっせき
)
沈滞せるもの
頃日
(
けいじつ
)
ようやく出口を得たることとて
前後
(
ぜんご
)
錯雑
(
さくざつ
)
序次
(
じょじ
)
倫
(
りん
)
なく
大言
(
たいげん
)
疾呼
(
しっこ
)
我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
世に不如意あるを
知初
(
しりそ
)
めつ、かねてより人類の最下層に
鬱積
(
うっせき
)
せし、失望不平の一大塊、
頃日
(
けいじつ
)
不思議の導火を得て、世の幸福を受けつつある婦人級と衝突なし、今にも破裂爆発して
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いたずらに欲求が
衝
(
つ
)
き上げてくるだけで、それを小説に具体化することができない。そこで、その欲求は
充
(
み
)
たされないで、私のうちに
鬱積
(
うっせき
)
し、私は一種のヒステリーみたいになっていた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
革命は社会内の矛盾や不満や不安が
鬱積
(
うっせき
)
した結果、一定の導化線で
勃発
(
ぼっぱつ
)
するから、実際は相当に永い間にだんだんとその原因が
醞醸
(
うんじょう
)
されるのではあるが、しかし革命そのものは激発的で
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
どうやら彼は二流どころの役割しか当てがわれていないらしく、彼のことばには答えるものもあまりなかった。この新しい情勢が、しだいに
鬱積
(
うっせき
)
した彼の癇癪を、ますます募らせるばかりであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それに、敵の首将信玄に対しては、なお遺憾な一太刀を残したにせよ、彼の中軍は
蹂躪
(
じゅうりん
)
し尽したといえるので、年来
鬱積
(
うっせき
)
していた宿念の一端を放つとともに
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬱
常用漢字
中学
部首:⾿
29画
積
常用漢字
小4
部首:⽲
16画
“鬱”で始まる語句
鬱
鬱陶
鬱蒼
鬱憤
鬱々
鬱金
鬱勃
鬱屈
鬱然
鬱懐