青楼せいろう)” の例文
旧字:青樓
友人にも同じくそのよしをいって無理やりに、その晩はうちへ帰って来たというが、青楼せいろうなどでは、往々にして、こういうはなしを聞くようである。
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
内は前栽せんざいから玄関もほかの青楼せいろうとはまるで違う上品なやかたづくりだ。長い廊から廊の花幔幕はなまんまくと、所々の鴛鴦燈えんおうとうだけがなまめかしいぐらいなもの。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまに帰ると家よりも青楼せいろうで深酌高唱、時にはまだ学生の庄吉をつれて出たまゝ倅まで青楼へ泊めてしまふていたらくで
オモチャ箱 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
もし江戸にいださば朱門しゆもん解語かいごの花をさかせ、あるひは又青楼せいろう揺泉樹えうせんじゆさかえをなし、此隣国りんごく出羽にうまれたる小野の小町が如く美人びじんの名をもなすべきに
揚州十年の痴夢ちむより一覚する時、ち得るものは青楼せいろう薄倖の名より他には何物もない。病床の談話はたまたま樊川はんせんの詩を言うに及んでここに尽きた。
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このお稲荷さんを修心すれば、長く客足を引きとめておくことができるというので、旅籠はたご青楼せいろう、その他客商売の参詣で賑わって、たいへんに繁昌したもの。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
町は一丁目から五丁目までありますが、二丁目から三丁目までに青楼せいろうがあり、大きな二階三階が立ち並んでいて、土地で羽振はぶりのよいのはその青楼の主人たちです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
歌麿は「青楼せいろう十二とき」この方、版下をらせては今古こんこの名人とゆるしていた竹河岸の毛彫安けぼりやすが、森治もりじから出した「蚊帳かや男女だんじょ」を彫ったのを最後に、突然死去して間もなく
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
花柳かりゅうの間に奔々ほんぽんして青楼せいろうの酒に酔い、別荘妾宅しょうたくの会宴に出入でいりの芸妓を召すが如きは通常の人事にして、甚だしきは大切なる用談も、酒を飲みに戯るるのかたわらにあらざれば
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いぬが尾を振っている。柳があって青楼せいろうつらなり、その先は即ち河口の港で、遠洋から帰った軍艦商船がいかりおろしているという趣向である。絵巻物のない国の人には解し得られない興味である。
峠に関する二、三の考察 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この艱難かんなん余所よそにして金が調ととのえりといいては青楼せいろうに登り絃妓げんぎようしぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
たまに帰ると家よりも青楼せいろうで深酌高唱、時にはまだ学生の庄吉をつれて出たまま倅まで青楼へ泊めてしまうていたらくで
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
もし江戸にいださば朱門しゆもん解語かいごの花をさかせ、あるひは又青楼せいろう揺泉樹えうせんじゆさかえをなし、此隣国りんごく出羽にうまれたる小野の小町が如く美人びじんの名をもなすべきに
種彦は屋根船の中に揺られながら眠っているような心持もすれば、また高い青楼せいろうの二階の深い積夜具つみやぐの中にふうわりとうずまっているような心地もする。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
将軍家をはじめ天下万民、いかなることになり行くかと、世を挙げて憂いかなしみ、御国の悩みを身の悩みとしておる際に——青楼せいろうで歌を謡うとは何事だ。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの辺の青楼せいろうやなんかは、イヤもう、どこへ行っても伊賀訛いがなまりでいっぱいだ。毎日隊伍たいごを組み、豪刀をよこたえて、こけ猿の茶壺やいずこ? と、江戸市中をさがしまわっている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これは友人のはなしだ、ある年の春の末、もう青葉の頃だったが、その男は一夜あるよ友人に誘われて吉原よしわらのさる青楼せいろうあがった、前夜は流連いつづけをして、その日も朝から酒を飲んでいたが、如何いかにも面白くない
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
江戸には雪のふらざる年もあれば、初雪はことさらに美賞びしやうし、雪見のふね哥妓かぎたづさへ、雪のちや賓客ひんかくまねき、青楼せいろうは雪を居続ゐつゞけなかだちとなし、酒亭しゆていは雪を来客らいかく嘉瑞かずゐとなす。
該書は十八世紀日本美術なる総称の下に『青楼せいろうの画家歌麿』と題せられ全巻を二篇にわかてり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今年正月友人いうじんらと梅見にゆきしかへるさ青楼せいろうにのぼり、そのあかつき雨ふりいだししが、とみにやみけるゆゑ青楼をいでて日本堤にさしかゝりしに、つゝみの下に柳二三ぼんあり、この柳にかゝりたる雨