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陳腐
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ちんぷ
ふりがな文庫
“
陳腐
(
ちんぷ
)” の例文
そういう身の上話は然し
陳腐
(
ちんぷ
)
で、ありふれていて、ききばえのある話などは、先ず、ないものだ。然し、それを笑うわけには行かぬ。
大阪の反逆:――織田作之助の死――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
想像の眼で見るにはあまりに
陳腐
(
ちんぷ
)
過ぎる彼の姿が津田の頭の中に出て来た。この夏会った時の彼の
異
(
い
)
な
服装
(
なり
)
もおのずと思い出された。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
縦縞が感覚および感情にとってあまりに
陳腐
(
ちんぷ
)
なものとなってしまった場合、換言すれば感覚および感情が縦縞に対して
鈍痲
(
どんま
)
した場合に
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
わかい男女の恋の会話は、いや、案外おとなどうしの恋の会話も、はたで聞いては、その
陳腐
(
ちんぷ
)
、きざったらしさに全身
鳥肌
(
とりはだ
)
の立つ思いがする。
犯人
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「あ、その神経瓦斯というものなら、既にドイツ軍がエベンエマエル
要塞戦
(
ようさいせん
)
に使ったということを聞いています。それはもう
陳腐
(
ちんぷ
)
な毒瓦斯で……」
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
已にして古俳書を
繙
(
ひもと
)
く、天の川の句
頻
(
しき
)
りに目に触るるを覚ゆ。たとひ
上乗
(
じょうじょう
)
にあらざるも皆一種の句調と趣向とを備へて必ずしも
陳腐
(
ちんぷ
)
ならず。例へば
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
初句の、「秋風に」という云い方は、簡潔で特色のあるものだが、後世こういう云い方が繰返されたので
陳腐
(
ちんぷ
)
になった。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
男女の心中とか、幽霊が出るとか出ないとか、
陳腐
(
ちんぷ
)
な夏の夜ばなしとちがい、これは耳あたらしい事件なので、涼み台には恰好な話題ではあった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、近年あまりにもてはやされたこのバッハでさえも、すでに
衒学
(
げんがく
)
的で
陳腐
(
ちんぷ
)
であると見なされ始め、要するに多少子供っぽいのだと見なされていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その戯曲も同様の戯曲なるにあらずや。ゆえに東洋改革史なるものは
陳腐
(
ちんぷ
)
常套
(
じょうとう
)
実に読むに堪えざるものあるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
故にこの
冊子
(
そうし
)
、たとい今日に
陳腐
(
ちんぷ
)
なるも、五十年の後には
却
(
かえっ
)
て珍奇にして、歴史家の一助たることもあるべし。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ところで、この「呪」についてこんな話があります。それはちょっと聞くと、いかにも、
陳腐
(
ちんぷ
)
な話ですが、味わってみるとなかなかふかい味のある話です。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
各学校で毎週一時間や二時間ずつ修身倫理の
陳腐
(
ちんぷ
)
な講釈をして聞かすよりは、苔虫類の群体を顕微鏡で見せ、その団体生活の状態を詳しく説き聞かせたほうが
理想的団体生活
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
それでなくても老人の売っているブリキの
独楽
(
こま
)
はもう田舎の駄菓子屋ででも
陳腐
(
ちんぷ
)
なものにちがいなかった。
堯
(
たかし
)
は一度もその玩具が売れたのを見たことがなかった。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
白い国!
蜃気楼
(
ミュアジュ
)
もかくや、——など
陳腐
(
ちんぷ
)
な形容ですが、事実、ぼくは
蜃気楼
(
ミュアジュ
)
をみた想いでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
杜国
(
とこく
)
亡びてクルーゲル今また
歿
(
ぼっ
)
す。
瑞西
(
すいっつる
)
の山中に肺に
斃
(
たお
)
れたるかれの
遺体
(
いたい
)
は、
故郷
(
ふるさと
)
のかれが妻の側に
葬
(
ほうむ
)
らるべし。英雄の
末路
(
ばつろ
)
、言は
陳腐
(
ちんぷ
)
なれど、事実はつねに新たなり。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その一例があの水の跡なんだが、それを
陳腐
(
ちんぷ
)
な残余法で解釈すると、水が人形の体内にある発音装置を無効にした——という結論になる。けれども、事実はけっしてそうじゃないんだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
だから、
渠
(
かれ
)
・
悟空
(
ごくう
)
の眼にとって平凡
陳腐
(
ちんぷ
)
なものは何一つない。毎日早朝に起きると決まって彼は日の出を拝み、そして、はじめてそれを見る者のような驚嘆をもってその美に感じ入っている。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
話す前に、この話があなたの耳には、多少
陳腐
(
ちんぷ
)
に響くだらうといふことを申上げて置く方がいゝでせう。しかし陳腐な物語も、新しい唇を通ると、幾分清新さを取返すことがよくありますね。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
現在ではこの種のトリックは
陳腐
(
ちんぷ
)
になり、誰も使わなくなっている。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
とやかくと無用な
陳腐
(
ちんぷ
)
な意見を述べる気にはなれないのだった。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
余は
病
(
やまい
)
に
因
(
よ
)
ってこの
陳腐
(
ちんぷ
)
な幸福と
爛熟
(
らんじゅく
)
な
寛裕
(
くつろぎ
)
を得て、初めて洋行から帰って平凡な米の飯に向った時のような心持がした。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なんという、
陳腐
(
ちんぷ
)
な、マンネリズムだ。私は、これまで、この言葉を、いったい何百回、何千回、繰りかえしたことであろう。無智な不潔な言葉である。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
現代の吾等は、擬人法らしい表現に、
陳腐
(
ちんぷ
)
を感じたり、反感を持ったりすることを止めて、一首全体の態度なり
気魄
(
きはく
)
なりに同化せんことを努むべきである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
するにある。両雄並び立たず——という
陳腐
(
ちんぷ
)
な計りごとを仕掛けてきたのじゃ。それくらいなことがわからぬか
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ああ、それは
陳腐
(
ちんぷ
)
なものばかりじゃ。今列国の兵器研究所が、秘密に取上げているものばかりだよ。今頃そんなものに手をつけては
手遅
(
ておく
)
れじゃ。こっちへ来なさい」
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
正しくはあるがやや
陳腐
(
ちんぷ
)
な一つの思想にたいていつづめられるようなものだった、たとえば
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
伸子は、あの
陳腐
(
ちんぷ
)
きわまる手法に、一つの新しい生命を吹き込んだ……
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「独逸を逃げ出した話も、何度となく
繰
(
く
)
り
返
(
かえ
)
すんでね、近頃はもう
他
(
ひと
)
よりも自分の方が
陳腐
(
ちんぷ
)
になってしまいました」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
どれも、これも結構でなかった。実に、
陳腐
(
ちんぷ
)
な、甘ったるいもので、私はあっけにとられたが、しかし、いまの
此
(
こ
)
の場合、画のうまいまずいは問題でない。
東京だより
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「しかし、クヮイズ侍が、どれほど
陳腐
(
ちんぷ
)
な頭なりや、
西瓜
(
すいか
)
ではないが、叩いて
中実
(
なかみ
)
を試みるのも一興だぞ」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
神を見たこの人も、クリストフの眼から見れば往々にして、面白くもない甘っぽい宗教があり、偽善的な
陳腐
(
ちんぷ
)
な様式があった。その
交声曲
(
カンタータ
)
のうちには、恋と信仰との
憔悴
(
しょうすい
)
の曲調があった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「なに君は知らない事だが、今までもそう云う話は何度もあったんだよ」とさも
陳腐
(
ちんぷ
)
らしそうに説明して聞かせた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
所謂
(
いわゆる
)
、好色物は、好きでない。そんなにいいものだとも思えない。着想が
陳腐
(
ちんぷ
)
だとさえ思われる。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
これは攻城野戦ともにやる
常套
(
じょうとう
)
的な正攻法で、兵家としては、まことに
陳腐
(
ちんぷ
)
な一攻手に過ぎない。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
クリストフは、自分の言うところを相手が少しも知っていないのに気づいて、
呆然
(
ぼうぜん
)
としてしまった。それから、この
衒学
(
げんがく
)
的な
陳腐
(
ちんぷ
)
なドイツ人にたいして、人々は一つの意見をたててしまった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼の説明によると、かねてその話は彼の母から何度も聞かされて、何度も決答をくり延ばした
陳腐
(
ちんぷ
)
なものであった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
陳腐
(
ちんぷ
)
きわまる文学論だか、芸術論だか、恥かしげも無く並べやがって、
以
(
もっ
)
て新しい必死の発芽を踏みにじり、しかも、その自分の罪悪に一向お気づきになっておらない様子なんだから
美男子と煙草
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「非常に
陳腐
(
ちんぷ
)
で退屈な御説教であった。そこで、謹んでお答え申そう。叡山には叡山の権威があり、信条もある。
要
(
い
)
らざるおせッかいというほかない。一鉄どの、日が暮れる、はやはや下山されよ」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それも実際はすでに
陳腐
(
ちんぷ
)
な批判であって、彼自身ももはや今日では賛成できかねるようなものが多かった。そういう四、五の論説が近ごろドイツの一雑誌に掲げられたので、シルヴァン・コーンはその奇警な逆説を
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼らは顔さえ見れば自然何かいいたくなるような仲の
好
(
い
)
い夫婦でもなかった。またそれだけの親しみを現わすには、御互が御互に取ってあまりに
陳腐
(
ちんぷ
)
過ぎた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何が何やら十年一日どころか千年一日の如き
陳腐
(
ちんぷ
)
な男女闘争をせずともよかった。
メリイクリスマス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
陳腐
(
ちんぷ
)
な道義の受け売りをしているように聞えるだろうが、こういう漂泊の空にある身でも、アアいい景色だなあと感じた時のような場合、側にもどこにもそれを語る者がいないということはその一瞬
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし口の先で使い慣れた結果、しまいには神もいつか
陳腐
(
ちんぷ
)
になりました。それから二人とも申し合せたように黙りました。黙ってから何年目になるでしょう。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
昔のくだらない
花柳
(
かりゅう
)
小説なんていうものに、よくこんな場面があって、そうして、それが「妙な縁」という事になり、そこから恋愛がはじまるという
陳腐
(
ちんぷ
)
な趣向が少くなかったようであるが、しかし
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は理屈から出たとも統計から来たとも知れない、この
陳腐
(
ちんぷ
)
なような母の言葉を
黙然
(
もくねん
)
と聞いていた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しめたものだと
陳腐
(
ちんぷ
)
な中学生式の空想もあったのでした。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いや、大胆になったから饒舌れたんだろう、君の云う事は
顛倒
(
あべこべ
)
じゃないかとやり込める気なら、そうして置いてもいい。いいが、それはあまり
陳腐
(
ちんぷ
)
でかつ時々
嘘
(
うそ
)
になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私がのつそつし出すと前後して、父や母の眼にも今まで珍しかった私が段々
陳腐
(
ちんぷ
)
になって来た。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私の答えは、思想界の奥へ突き進んで行こうとするあなたに取って物足りなかったかも知れません、
陳腐
(
ちんぷ
)
だったかも知れません。けれども私にはあれが生きた答えでした。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
陳
常用漢字
中学
部首:⾩
11画
腐
常用漢字
中学
部首:⾁
14画
“陳腐”で始まる語句
陳腐論
陳腐過