足掛あしかけ)” の例文
阿部家はついで文政九年八月に代替だいがわりとなって、伊予守正寧まさやすほういだから、蘭軒は正寧の世になったのち足掛あしかけ四年阿部家のやかた出入いでいりした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小櫻姫こざくらひめ通信つうしん昭和しょうわねんはるから現在げんざいいたるまで足掛あしかけねんまたがりてあらわれ、その分量ぶんりょう相当そうとう沢山たくさんで、すでに数冊すうさつのノートをうずめてります。
母は机の下をのぞき込む。西洋流の籃製かごせい屑籠くずかごが、足掛あしかけむこうほのかに見える。母はこごんで手をのばした。紺緞子こんどんすの帯が、窓からさすあかりをまともに受けた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伏見の戦争が初まる三月みつき程前から再び薩州やしきに行つたり明治五年まで足掛あしかけ六年の間一度も帰つて来なかつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
しなうちからは近所きんじよ風呂ふろたぬときた。いそがしい仕事しごとにはやとはれてもた。さういふあひだ彼等かれら關係くわんけい成立なりたつたのである。それはおしなが十六のあきである。それから足掛あしかけねんつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
足掛あしかけ五年も続いたというのはどうしたことか! 結婚はあきらめましょう。
ちょいとまきを倒したほどの足掛あしかけかかっているが、たださえ落す時分が、今日の出水でみずで、ざあざあ瀬になり、どっとあふれる、根を洗って稲の下から湧立わきたいきおい、飛べる事は飛べるから、先へ飛越えては
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『そうしてムシュウ19はあたし達んところに三年——いいえ、足掛あしかけ四年働いている忠実な忠実な運転手さんなの。この頃の召使いは腰が浮いてて困るんですけれど、あなただけは別なんですって。』
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
足掛あしかけねんまたが籠城ろうじょう……つき幾度いくどとなくかえされる夜打ようち朝駆あさがけ矢合やあわせ、い……どっとおこときこえ