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谿間
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たにま
ふりがな文庫
“
谿間
(
たにま
)” の例文
又、この風景作家の異常なる注意は、裸女の蓮台が通り過ぎる所の、
谿間
(
たにま
)
の花の細道が作る曲線にまでも行届いていたのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
谿間
(
たにま
)
せせらぐ秋の水といおうか、草むらにすだく残りの
蟲
(
むし
)
の音といおうか、それは言いようもなく淋しく、やるせなく、そして美しい表現です。
奇談クラブ〔戦後版〕:16 結婚ラプソディ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
不可解の
失踪
(
しっそう
)
をとげた道夫の先生の川北順に違いない人物が、平井村の赤松山の下の
谿間
(
たにま
)
で発見されたというのであった。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
木立が高く、ひろい
谿間
(
たにま
)
を見おろすことが出来る。その谿間は一めんに落葉でうづまつてゐる。そして、しいんとして仕舞つて、今は一鳥だも啼かない。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
谿間
(
たにま
)
の百合の
大輪
(
おおりん
)
がほのめくを、心は残るが見棄てる気構え。
踵
(
くびす
)
を廻らし、猛然と飛入るがごとく、
葎
(
むぐら
)
の中に躍込んだ。ざ、ざ、ざらざらと雲が乱れる。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
泥棒
(
どろぼう
)
が
監獄
(
かんごく
)
をやぶつて
逃
(
に
)
げました。
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
をたよりにして、
山
(
やま
)
の
山
(
やま
)
の
山奥
(
やまおく
)
の、やつと
深
(
ふか
)
い
谿間
(
たにま
)
にかくれました。
普通
(
なみ
)
、
大抵
(
たいてい
)
の
骨折
(
ほねを
)
りではありませんでした。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
露けく茂りたる
蔦
(
つた
)
の、おほいなる洞門にかゝりたるさまは、カラブリア州の
谿間
(
たにま
)
なる
葡萄架
(
ぶだうだな
)
を見る心地す。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その裾野の傾斜は更に延びて行って、二三の小さな山村を村全体傾かせながら、最後に無数の黒い松にすっかり包まれながら、見えない
谿間
(
たにま
)
のなかに尽きていた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
山にはまだ雪が白く
谿間
(
たにま
)
などには残っており、朝風は刺すように寒く、車夫のいった通り道もわるい。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
この
谿間
(
たにま
)
に移ってからというものは、騎西家の人達は見違えるほど野性的になってしまって、
体躯
(
からだ
)
のいろいろな角が、ずんぐりと節くれ立ってきて、皮膚の色にも
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
だんだん道が狭くなって、しかも次第に
谿間
(
たにま
)
へ入ってゆくので、元気な青木も何度か立止まった。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
庸三の子供が葉子を形容したように彼女は
鳥海山
(
ちょうかいさん
)
の
谿間
(
たにま
)
に生えた一もとの
白百合
(
しらゆり
)
が、どうかしたはずみに、材木か何かのなかに紛れこんで、都会へ持って来られたように
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
武蔵にも多くの例がある。
谿間
(
たにま
)
の入野に比較してやや広い平野をば和田といったようである。またこれを沖ともいう所がある。オキもワダもともに陸地に用いられている。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
とはいえ、白河の激水に、
夏侯惇
(
かこうじゅん
)
、曹仁の
輩
(
ともがら
)
を奔流の計にもてあそび、博望の
谿間
(
たにま
)
にその先鋒を焼き
爛
(
ただら
)
し、わが軍としては、
退
(
ひ
)
くも堂々、決して醜い潰走はしていません。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お昼に、子供達の一行は、或る
谿間
(
たにま
)
に集まった。その底の方を小さな谷川が流れていた。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
陽気な、疲れることなどをまるで知らないニムフの踊りの輪から、ようようぬけた彼は、涼しさを求めて、ズーッと
橄欖
(
かんらん
)
の茂り合った丘を下り、野を越えて、一つの
谿間
(
たにま
)
に入りました。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼らは、石炭と海との
親不知
(
おやしらず
)
、石炭と石炭との山の
谿間
(
たにま
)
を通って、
夕張
(
ゆうばり
)
炭山へ続いている鉄道線路を越して、室蘭の市街へ出た。その
街
(
まち
)
は、昼も夜のように寂しい感じのする街であった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
雪ふかしここの
谿間
(
たにま
)
の湯の宿の
湯気
(
ゆげ
)
のこもりによくぬくもらむ
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
をぐらきまむしの
谿間
(
たにま
)
たぎちゆきて
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
雲雀
(
ひばり
)
は空気を震動させて上天の方にゐるかとおもふと、
閑古鳥
(
かんこどり
)
は向うの
谿間
(
たにま
)
から聞こえる。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
旗や
馬幟
(
うまじるし
)
の激流は、雲が
谿間
(
たにま
)
を出るように、
銅鑼金鼓
(
どらきんこ
)
に脚を早め、たちまち野へ
展
(
ひろ
)
がった。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを
憶
(
おも
)
へば烟立つヱズヰオの
巓
(
いたゞき
)
、露けく緑深き葡萄の蔓の木々の梢より梢へと纏ひ懸れる美しき
谿間
(
たにま
)
、或は苔を被れる岩壁の上に
顯
(
あらは
)
れ或は濃き
橄欖
(
オリワ
)
の林に遮られたる
白堊
(
はくあ
)
の
城砦
(
じやうさい
)
など
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
谿間
(
たにま
)
をながれる泉のやうに
風は草木にささやいた:01 風は草木にささやいた
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
薄暮
(
くれがた
)
の
谿間
(
たにま
)
の
恐怖
(
おそれ
)
。
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
谿間
(
たにま
)
の水の具合をよく観ていて、それを序詞としたのに感心すべく、隠れた水、沢にこもり湧く水が、石根をも通し流れるごとくに、一徹におもっております、あなたに逢うまでは
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
旅人の高山の
巓
(
いたゞき
)
に登り得て、雲霧立ち籠めたる大地を看下すとき、その雲霧の散るに從ひて、忽ち隣れる山の
尖
(
さき
)
あらはれ、忽ち日光に照されたる
谿間
(
たにま
)
の見ゆるが如く、我心の世界は漸く開け
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
林中には
樅
(
もみ
)
が生ひ茂つて、その
木下
(
こした
)
には
茸
(
きのこ
)
の群生した所もあつた。そこを通抜けると、
紅葉
(
もみぢ
)
して黄色く明るくなつた林を透して深い
谿間
(
たにま
)
が見える、その谿間をイーサルの川が流れてゐるのである。
イーサル川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
“谿間”の意味
《名詞》
谷間。谷あい。
(出典:Wiktionary)
谿
漢検1級
部首:⾕
17画
間
常用漢字
小2
部首:⾨
12画
“谿”で始まる語句
谿
谿谷
谿流
谿河
谿川
谿底
谿水
谿々
谿合
谿壑