“たにま”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
谷間32.5%
谿間31.2%
渓間27.3%
溪間5.2%
壑間1.3%
渓谷1.3%
澗間1.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
縛られているのもある、一目ひとめ見たが、それだけで、遠くの方は、小さくなって、かすかになって、ただ顔ばかり谷間たにま白百合しろゆりの咲いたよう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
谿間たにませせらぐ秋の水といおうか、草むらにすだく残りのむしの音といおうか、それは言いようもなく淋しく、やるせなく、そして美しい表現です。
赤々として熱そうな、日入いりひの影が彼方むこうの松林に照りつけると、蜩の声は深山の渓間たにまで鳴くのである。もはや帰るべき時はきたった。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
溪間たにまの温泉宿なので日がかげり易い。溪の風景は朝遅くまでは日影のなかに澄んでいる。やっと十時頃溪向こうの山にきとめられていた日光が閃々せんせんと私の窓をはじめる。
冬の蠅 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その死をとどめんの一念よりあらぬ貫一なれば、かくと見るより心も空に、足は地を踏むいとまもあらず、唯遅れじと思ふばかりよ、壑間たにまあらしの誘ふにまかせて、驀直ましぐらに身をおとせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は壑間たにまの宮を尋ぬる時、この大石たいせきを眼下に窺ひ見たりしを忘れざるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その愉快なることいわん方なく、膝栗毛の進みもますます速く、来た処は、音に名高き胸突き八丁の登り口。日ははや暮れかかり、渓谷たにまも森林も寂寞せきばくとして、真に深山の面影がある。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
澗間たにま凹地おうちに引出された女どもの疳高かんだか号泣ごうきゅうがしばらくつづいた後、突然それが夜の沈黙にまれたようにフッと消えていくのを、軍幕の中の将士一同は粛然しゅくぜんたる思いで聞いた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)