)” の例文
「ほんまに、ほんまに、………いずれおびにお伺いしますけど、………お怒りになるのもちょっとも無理やあれしませんけど、………」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかも君はいない。僕はそれをざっと見てから、失礼をびて帰ってきた。そして、アヴドーチャ・ロマーノヴナにありのまま報告した。
「此の方よりも今日の、此の御無礼をばびがてら、大先生の御遺筆なぞ拝見いたしに、参邸のお許しを得とう厶る」
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
預った私ら一同、若親分にお合せ申す面がございません、そのおびは改めてのこと、ず——お悔みだけ申上げます。さぞお力落しでございましょう
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
騒ぎのあった翌日、その狼藉ろうぜき者一党が揃ってびにきたが、その時、父はすこし寒気さむけがするといっていたが、左の手の甲が紫色にれてるだけだった。
さうするとここに金さへ有れば、どうにか成るのでせう! 貴方の費消つかひこみだつて、その金額を弁償して、よろしく御主人にびたら、無論内済に成る事です。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼の妻は彼自身には勿論、彼の伯母にもびを言つてゐた。彼の為に買つて来た黄水仙の鉢を前にしたまま。……
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おかみはみんなの前で、二こと三こと、投げやりな言葉でびをいったが、だれもおかみに文句はいわなかった。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
道綱をお呼び出しになって「これまで大へん御無沙汰申していたおびかたがた、こうやって参りました」
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そこでこの点の不注意と軽率とを、僕は改めて読者におびしたい。と言うわけは、今度ようやく稿を集めて僕の体系ある自由詩論の一冊を、アルスから出版することになったからだ。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
婦人はリストの門弟と触れ込んだ女流ピアニストであったが、涙を流して、「先生のお名前でも拝借しなければ、私のピアノなどを聴いて下さる方もありません」とびるのであった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
『先生、許して下さい。』びるやうに言つて、やがた新聞を取上げた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこに日本独特のしぶい「び」の美がある。イタリー名物の傘松は実を採られ防風林に使はれる。何の求むるところなく愛される東洋の庭の松は幸福である。手入れが済んで、どうやら形がつく。
女性と庭 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
いひへてると自分じぶんこゝろがわかつていたゞくように、説明せつめいをし、おねがひをし、おびをするもので、根本こんぽん精神せいしんにおいては、このとほり、わたしどもは服從ふくじゆうまをしてをります、といふちかひの意味いみになります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
オリヴィエはびた。
「僕もさし向き家へ行きましょう、ただしあなたの住まいじゃありませんよ。ソフィヤ・セミョーノヴナの家へ、葬式に行かなかったびに」
ぬる文禄三年の秋、わざ/\邸へ呼びつけられて怠慢のかどとがめられ、厳しい叱責を蒙った折には、畳に額をりつけてごとを述べておきながら
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宮が今罪をびて夫婦になりたいと泣き付いて来たとしても、一旦心を変じて、身までけがされた宮は、決してもとの宮ではなければ、もうはざまの宝ではない。間の宝は五年ぜんの宮だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ばかな真似をしてしまって、あれが刀だったら僕の頭は真二ツに割られているところだ。とても歩けはしないが、ぜひびにゆけと皆に抱えてこられた。眼が廻るほどピンピンする。」
お掛け申し、なんともおびの致しようがござらぬ、ひらに御勘弁が願いたい
金五十両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
第二には、彼がすぐさま鄭重ていちょうなことばで、なんとか葬儀に参列しようと思いながら、その意を果たすことができなかったと、びを言ったからである。
その時分にはいつもお母さんが兄さんにびを入れて堪忍かんにんしてもらっていたのだそうだ、しかし今度はお母さんがいないし、たびたびのことであると云うので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
無拠よんどころなく不束ふつつかをも申候まをしさふらふ次第に御座候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
大丈夫お請合うけあいしますと、あんなに申上げて置きながら、何と云う失敗をしたものか、おびの言葉もありません、と、汗をびっしょりいて云うのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
貞之助は、外套がいとう預所のところまで迎えに出ていた井谷を見ると、挨拶よりもび言を並べた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大方猫にしてみれば、自分が無愛想にしてゐた人に、今日から可愛がつて貰はうと思つて、いくらか今迄の無礼をびる心持も籠めて、あんな声を出してゐるのであらう。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此のおびにはこれから精々気を附けて御注進に及びましょうと、お答えなされましたとやら。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
云い出したからはいかにび入っても聴き入れずとうとう本当にその弟子を断ってしまった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
のこんの色香いろかを墨染の袖に包んでいる尼と狭い一室にひざをつき合わせ、彼女の孤独を慰めたり自分の無躾ぶしつけびたりしながら、少しずつ身の上話を手繰たぐり出すようにしたのであろう。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「もうええ彼方あっちへ行き」と云われてからもまだしばらく死んだようになっていたのが、「もう行きなさい」と二三度云われると、ようやく聞き取れない程のかすかな声でび言を云って立って行ったが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
第一親の身として其許そこもとに対しても御びの申様も無之これなく、深く耻入はじいり申候。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
巧いことの有りったけを並べてびを云い、踊り子の方は昔のことで今は切れている、子供と云うのも、実は誰の子だか分らないのを僕が背負い込まされたので、これも綺麗に親子の縁を切ってある
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うまいことびを云って、否応いやおうなしに又置いて行ってしまう。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、二度三度びを云った。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)