衣裳いしやう)” の例文
事定りてのち寺に於て稽古けいこをはじむ、わざじゆくしてのち初日をさだめ、衣裳いしやうかつらのるゐは是をかすを一ツのなりはひとするものありてもの不足たらざるなし。
薔薇ばら色の翼、金色きんいろの弓、それから薄い水色の衣裳いしやう、——かう云ふ色彩を煙らせた、もの憂いパステルの心もちも佐藤君の散文の通りである。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
小道具と衣裳いしやうと、こね廻したやうに散ばつて居る上、あぶらと汗と白粉のカクテルで、これが本當に青大將あをだいしやうの匂ひです。
そのお金の中から私自分の衣裳いしやうの支度をします。だからあなたは何も私に下さつちやあいけません、たゞ——
こゝにおいて、はじめは曲巷ちまた其處此處そここゝより、やがては華屋くわをく朱門しゆもんされて、おくらざるところほとんすくなく、かれすもの、不具ふぐにしてえんなるををしみて、金銀きんぎん衣裳いしやうほどこす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衣裳いしやうの好みや身体からだこなしこの種類の女としては水際だつてひんの好い物優しい所がある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
問ずこううたがはしきは之をあげよと衣裳いしやうに血を引飛石にの付たるにて殺したるは傳吉ならんとうたがはれ拷問がうもん嚴敷きびしき堪兼たへかねて罪に伏せしと傳吉並に專より申立しが此儀このぎ如何いかなるやと云るれば伊藤いとうおもて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
晴代を世話するのもさう云ふ社会の一つの外見みえで、衣裳いしやうや持物や小遣ひには不自由を感じないながらに、異性の愛情らしいものがなく、何か翫弄おもちやにされてゐるやうなさびしさと侮辱とを感じてゐたので
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
事定りてのち寺に於て稽古けいこをはじむ、わざじゆくしてのち初日をさだめ、衣裳いしやうかつらのるゐは是をかすを一ツのなりはひとするものありてもの不足たらざるなし。
中には小道具や衣裳いしやうの見張りで、泊り込んでゐる濱吉といふ、年寄の囃子方が一人居るだけ、小磯扇次も、名主の娘お吉も、木戸番の種吉も姿を見せません。
あまりにもいつもの自分とは似てないので、殆んど他人の像のやうに思はれる、衣裳いしやうをつけて被衣ヴヱールを被つた姿が見えた。「ジエィン!」と呼ぶ聲に私は駈け下りた。
僕は十五万円も費したと云ふ大使館の客間サロンまつたく失望して居るが、かへつて微力な中から是丈これだけある種の調和的な日本趣味を具体し得た日本まちを感心だと思ふ。惜しい事には女達の衣裳いしやうまづい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
くて同年ごく月二日評定所へ又々前々のとほ役人やくにん衆相揃はれ右一件のもの總殘そうのこらず御呼び出し追々おひ/\白洲しらすに呼込に相成役人衆やくにんしう列座れつざいたされ時に大岡殿越後國頸城郡寶田村百姓上臺憑司とよばれ其方儀是迄段々吟味に及びし所猿島河原きられ人は其方せがれ嫁等の趣き申立ると雖も必ず昌次郎梅とは定め難く其わけは同じ衣裳いしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ブチまけるやうにどつと來ると、女の子はあつしの首つ玉より自分の衣裳いしやうの方が大事だから、チリヂリバラバラになつて近所の家へ飛び込んでしまひましたよ。
あかりは化粧机の上に置いてあつて、床に這入る前に婚禮の衣裳いしやう被衣かつぎをかけておいた押入の扉は開け放しになつてゐました。そこで何かさら/\と云ふ音がするのです。
「黒衣は衣裳いしやう戸棚にありますが、黒衣を着る後見人は二年もないさうです。藝人が皆んな馴れて、黒衣が要らなくなつたんださうで、これは權次郎の自慢でしたよ」