もう)” の例文
「そんな理解のない人が中学校長をしているのは教育上面白くない。縁談は兎に角として、国家のためにもうひらいてやる責任があるよ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
が、例を引き、因を説きもうひらく、大人の見識を表わすのには、南方氏の説話を聴聞することが少しばかりおくれたのである。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あっぱれ相手のもうをひらいたつもりで、堀部君はここまでひと息にしゃべり続けたが、それは一向に手ごたえがなかった。
雪女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御仏の足もとにぬかずいて、二十年のもうをひらいてくれたことを心から感謝したい。草へも木へも、よろこびを伝えたい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時代の変遷へんせんに会う毎に埋没まいぼつはいよいよ甚だしく、結句めいめいの迷いを散じもうひらくために、手近に見つかる知識をさえなくしてしまうのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はっきりさせるのだ、わしは天下のもうをひらいてやるのだ、いいか、よく聞けよばか者、わしはな……
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
軽く見すぎているか、或は、病気に対する理解が薄いために、自宅で多少の雑用ぐらいはできると思い込んでいる場合、医師として、そのもうひらく義務はありませんか
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
ついでながらそのもうひらいておくが、女子が学問して生意気になるのは、まだまだ教育が足りないのか、しからずんば誤っているのであって、即ち教育の罪で学問の罪ではない。
夫婦共稼ぎと女子の学問 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
莊子さうじ(一八)蒙人もうひとなりしうしうかつもう(一九)漆園しつゑんたり。りやう惠王けいわうせい宣王せんわうときおなじうす。(二〇)其學そのがくうかがはざるところし。しかれども其要そのえう老子らうしげんもとづきす。
一方には彼等を網羅してこれを諭し、その古来徹骨てっこつもうひらきて我主義に同化せしめんとの本願なれば、四面暗黒の世の中にひとり文明の炬火きょかを点じて方向を示し、百難をおかしてただ前進するのみ。
四十年前に、俳句を引摺ひきずって他の文芸のあとを追うことのみをもっぱらとした一派の人があったがために、私はそのもうひらこうと思って、俳句は自然をうたう詩であることを力説したのであった。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
しかし若崎の何か勘ちがいをしたかんがえっているらしいもうひらいてやろうというような心切しんせつから出た言葉に添った態度だったので、いかにも教師くさくは見えたが、威張いばっているとは見えなかった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう事変とは何か!
飢餓の中から (新字新仮名) / 中野鈴子(著)
「実は僕達は世間のもうひらく為めに会をやっているんです。橘会、又の名袖の香組といって、養子又は女婿が会員です」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また、もうひらかれて、謙信のなして来た戦が、何を志し、何を意義しているものかを、初めてはっきりさとり得た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その著国憲汎論こっけんはんろんは世にでて、その精神を伝え、以て帰向に迷った人心のもうを啓き、教育上に於ては梓君の心血を注いだ東京専門学校が今や大いに発展して早稲田大学となり
東洋学人を懐う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「迷信家のもうをひらいてやるかな。」と、彼はまた笑った。
西瓜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また、そのようなふるき思想にとらわれている家中の者のもうをさますためにもと、あえて、かれを殺しました
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とお母さんはもうひらこうと努めた。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
忙しい中を、角川書店の角川源義氏が一ト抱えもの文献をもって来て、児島高徳のことやら、五流山伏と後醍醐朝との関係などについて、私のもうをたすけてくれた。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「奈良、高雄、みな旧教のもうをかぶって、象牙ぞうげの塔に籠っている過去の人間どもばかりではないか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満寵のことばは、曹仁のもうをひらくに充分であった。彼は正直に自己の考えちがいを謝し
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、いくら思念しても苦行しても、もうのひらき得ない凡質が、なまなか大智をもとめてのたうちまわっているのは、自分でもたまらない苦悶ですし、世間にも、無用の人間です。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の運に悲しむのも忘れて、官兵衛は、彼のもうを痛嘆していた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一言のもとに、玄徳は心服して、そのもうを謝し
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)