花束はなたば)” の例文
いつの間におぼえたのか、いくつかの花を器用にあしらって、あとは花活はないけになげこめばいいだけの形の花束はなたばにまとめあげるのだった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
文字通りの熱狂ねっきょう的な歓送のなか、名も知られぬぼくなどにまで、サインをたのみにくるおじょうさん、チョコレェトや花束はなたばなどをくれる女学生達。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
勘次かんじもおつぎもみそはぎちひさな花束はなたばさき茶碗ちやわんみづひたしてみづをはらりといもつた茄子なすかけけた。勘次かんじ雨戸あまどを一ぱいけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
更に又たくみにその過剰を大いなる花束はなたばに仕上げねばならぬ。生活に過剰をあらしめるとは生活を豊富にすることである。
植木鉢うゑきばち草花くさばな花束はなたば植木棚うゑきだな、そのしづかに流れるは、艶消つやけしきんの光をうつしつつ、入日いりひうんを悲んで、西へともなふセエヌかは、紫色の波長く恨をひいてこの流
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
この少女しょうじょは、あおそらへ、まれてしまったものか、そのままおともなく、かげしてしまった。あとで、おんなは、花束はなたばかおりをかぎました。それは、はるはやくく、ヒヤシンスに、フリージアでした。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
千山の荒き岩間のすずらんとリラを合せてつくる花束はなたば
ける花束はなたばのくづ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
障子しやうじもないすゝつた佛壇ぶつだんはおつぎを使つかつて佛器ぶつきその掃除さうぢをして、さいきざんだ茄子なすつたいもと、さびしいみそはぎみじかちひさな花束はなたばとをそなへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この姿は勿論もちろん逆光線のために顔などははっきりとわからない。が、いつか少年に似た、可憐かれんな顔を現してしまう。踊り子は静かに窓をあけ、小さい花束はなたばを下に投げる。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)