脊負しょ)” の例文
田舎者「宿屋の番頭さんは物の間違にならん様にするが当然あたりまえで、わしが目で見て証拠が有るので、なに間違えばえ、わし脊負しょって立つ」
お島は夜を待つまもなく、小僧の順吉に脊負しょいださせた蒲団ふとんに替えた、すこしばかりの金のうちから、いくらか取出してそれを渡した。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あわいのある脊後うしろ脊負しょって、立留って、此方こなたのぞき込むようにしたが、赤大名の襤褸姿ぼろすがた、一足二足、そっちへ近づくと見るや否や、フイと消えた、垣越のその後姿。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然し文章について、大意見があるとは甚だ面白い。是非伺いたいと思います。「アン火」は感じがわるいですね。仏蘭西あたりのいか様ものを脊負しょい込んだのでしょう。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それにもかかわらず、彼女は全く変化していた。どこから見ても田舎育ちの御婆さんであった。多少誇張していえば、かごに入れた麦焦むぎこがしを背中へ脊負しょって近在から出て来る御婆さんであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茂之助は少し用が有って町へ買物に出ますると、足利地方では立派なうちのお内儀かみさんが風呂敷包を脊負しょって買物にきます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
積込んで、小火ぼやのあった日から泊りがけに成田へ行っていた男だけれど、申訳を脊負しょって立って、床屋を退散に及ぶというなら、可々よしよし心得た。御近所へ義理は済む。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小僧にも脊負しょわせ、自分にも脊負って、勘定を受取って来たところで、やっと大家や外の小口を三四軒片着けたり、職人の手間賃を内金に半分ほども渡したりすると、残りは何程もなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
新吉は怖い一三眛いっさんまい、早く逃げようと包を脊負しょって、ひょっと人に見られてはならぬとふるえる足を踏締めながらあせります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どさくさ紛れに葛籠つづら箪笥たんす脊負しょい出そうッて働きのあるんじゃありませんがね、下がったあわせのじんじん端折ばしょりで、喞筒ポンプの手につかまって、空腹すきはらあえぎながら、油揚あぶらげのお煮染で
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
植源いこうかばら脊負しょうか、ということばと共に、界隈かいわいでは古くから名前の響いたその植源は、お島の生家さとなどとは違って、可也かなり派手な暮しをしていたが、今は有名なやかまの女隠居も年取ったので
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
新「我慢してお出でよ、私がおぶいが、包を脊負しょってるからおぶう事が出来ないが、私の肩へしっかつかまってお出でな」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
浪「いつものばゞあがまいりました、あの大きなかご脊負しょってお芋だの大根だの、や何かを売りに来る婆でございます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうぞなわしが貴様のうちへ来て、飴屋と話をした事だけはごく内々ない/\でいてくれ、いか、屋敷の者に……ばゞあが又かご脊負しょって、大根や菜などをうりに来た時に
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あれを引掛ひっかけて然うしてやっこ蛇の目の傘を持って、傘は紐を付けてはす脊負しょって行くようにしてくんな、ひょっと降ると困るから、なに頭巾をかぶれば寒くないよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はまア斯様こんなにお前さんの介抱を受けようとは思いませんかったが、不思議な縁で連に成ったのも矢張やっぱり笈摺を脊負しょったお蔭、全く観音様の御利益ごりやくだと思います
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と是から田舎気質かたぎの律義な婆アゆえ、若草の位牌を脊負しょって安兵衞の跡にいて堀切の別荘へ参りました。
そうしてわれ種々いろ/\な物を盗み、脇差い差し、風呂敷脊負しょって脚半を掛け、草鞋穿きになって此処こけへ来て、田舎者の仮声こわいろを遣って取った所がたった八十両べえの金
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これから其の修行者に取押えを言い付けた所が、其奴そいつのいうには手前の脊負しょったおいに目方が無くては成らぬから、鉄の棒を入れるだけの手当を呉れと云うから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや最前から各々方おの/\がたのお話を聞いていると、可笑おかしくてたまらんの、拙者も長旅で表向おもてむき紫縮緬むらさきちりめん服紗包ふくさづゝみはす脊負しょい、裁着たッつけ穿いて頭を結髪むすびがみにして歩く身の上ではない
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おどして抱いて寝る積りで、胡麻の灰の勇治がすらり抜くと山之助も脊負しょっているつとから脇差を出そうかと思ったが、いや/\怪我でもしてはならぬ大事の身体と考え直して
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女「お婆さん其の包みを脊負しょっておいでよ…貴方方は東京とうけいでいらっしゃいますか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おっかねえこんだと思って居ると、又一日って神田旅籠町から出た火事は、ぜん申上げました通り故、角右衞門も馬喰町を焼け出され、五八は大きな包を脊負しょってせっ/\と逃げ出しましたが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こゝに脊負しょってるこれを覚えて置け、刀屋になるのなら是を覚えて置かなければならんぜ、粟田口國綱という勝れた逸物わざものだ、刀屋にならば能く覚えて置け、五ろう入道寳龍齋正宗にゅうどうほうりゅうさいまさむね伯耆ほうき安綱やすつな
今田舎気質かたぎの婆さまが正直に若草の位牌を脊負しょって這入ってまいりました。