綿密めんみつ)” の例文
富士山ふじさん測量そくりょうはいまだ綿密めんみつに出来ていないごとく、大人物であればあるほど、その高さも大きさも容易ようい凡人ぼんじんの見分け得るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「まことに、綿密めんみつな御軍配、それ以上はございますまい。が、そのためにかえって、どこもかしこも、守線の薄い弱味がなくもございませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから急に一つ首をたてに振ると一つの小さい目盛盤ダイヤルをとりはずし、他のものと綿密めんみつに比較研究をしているようでした。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この山を下へ降ると大きな川がある。その川を渡ってこういう風に行くんだと綿密めんみつに教えてくれた。まずこれで二、三日行くだけの道順が分ったという訳。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
最初さいしよは、たくさんの貝殼かひがらは、はたしてむかしひとがそのにくつてすてたものか、どうかゞ疑問ぎもんとせられたのでありましたが、ある學者がくしや綿密めんみつ調査ちようさした結果けつか、すてゝあるそれらの貝殼かひがら
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
余は「罪と罰」第一くわん通讀つうどくすること前後ぜんごくわいせしが、その通讀つうどくさいきはめて面白おもしろしとおもひたるは、殺人罪さつじんざい原因げんいんのいかにも綿密めんみつ精微せいび畫出くわくしゆつせられたることなり、もしある兇漢けふかんありてある貞婦ていふころ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかし生徒の訳読に一応耳を傾けた上、綿密めんみつあやまりを直したりするのは退屈しない時でさえ、かなり保吉には面倒めんどうだった。彼は一時間の授業時間を三十分ばかりすごしたのち、とうとう訳読を中止させた。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そしてそのことの可能性やら、世人の輿論よろんやら、または一朝不成功に帰した場合までの結果を、彼らしい用心ぶかさをもって綿密めんみつに考えつめていたものだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一行はなおも隧道の全体にわたって異状がないかどうかを調べるために、崩れた崖をよじのぼって、隧道の屋根にあたる山の上を綿密めんみつしらべてゆくことになりました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第六囘だいろくくわいいたりてはじめて、殺人さつじん大罪だいざいなるかいなかの疑問ぎもん飮食店いんしよくてん談柄だんぺいより引起ひきおこし、つい一刹那いつせつなうかいださしめて、この大學生だいがくせいなんあだもなき高利貸こうりかし虐殺ぎやくさつするにいたる。だいくわいその綿密めんみつなる記事きじなり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかしけっきょく、これまでにこれだけのすぐれた綿密めんみつ境地きょうちを開いた学者はいなかったので、この博士論文は通過した。そのかわり、審査に一年以上を要したのであった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このふたりの論争ろんそうも、綿密めんみつ築城法ちくじょうほうのことから意見いけん衝突しょうとつし、しろ間道埋設かんどうまいせつ要点ようてんで、かなり論争ろんそうに火花をちらし合ったが、ついに八しゃりゅう敗北はいぼくとなって、月花流げっかりゅう熊本方くまもとがたでは
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)