竹竿たけざお)” の例文
モチの木の皮をはいで石でたたいて強いモチを作り、竹竿たけざおのさきに指をなめては其をまきつける楽しさを今でもやや感傷的に思出す。
蝉の美と造型 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
指さしたのは、お勝手寄りの壁に立てかけた竹竿たけざおの切れっ端、六尺くらいもあるのに、一尺ほどの曲った横木を縛った十字形のものでした。
「あっ。」とわか姉さんはさけびました。そして竹竿たけざおをほうり出すと、両手をひろげて新吉しんきちのからだを受け止めようとしました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
彼は安心したように、病院の横へ廻って、物干場に渡してある、すべての綱と竹竿たけざおとを、こッそり裏の方へ運び出した。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だが旦那、ただの竹竿たけざおが潮の中をころがって行くのとは違った調子があるので、釣竿のように思えるのですネ。」
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
細い長い竹竿たけざおのさきに、縫針ぬいばりくぎなどを附けたものさえ関東にはあった。それを垣根のすきからそっとさし入れて、縁端えんばなのお月見団子を取って行くのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
竹竿たけざおをもってそれをたたき落すのだが、妻がその音を聴きつけては、急いで出て来て、子供をしかり飛ばす。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
卵の積りで陶物やきものの模型卵を呑んで、苦しがって居るのだ。折から来合わして居たT君が、尻尾しっぽをつまんで鶏小屋から引ずり出すと、余が竹竿たけざおでたゝき殺した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
船頭のかずは四人である。真っ先なるは、二間の竹竿たけざおづく二人は右側にかい、左に立つは同じく竿である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地上では、一人の心利いた刑事が、どこからか太い竹竿たけざおを探して来て、その先に手頃の石を括りつけた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「おじさん、梯子はしご竹竿たけざおをもっていって、一階の窓にとりつきガラス窓をこわしてはいってはどう」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一人は、空に何か投げあげてコウモリをおびきよせるかかりで、他の一人がセミ取りの、袋のついた竹竿たけざおを持っていて、地上に降りてきたコウモリに素早く袋をかぶせるのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
まさかそれが旦那だんなだとは夫人も言いかねて、貉か犬でもあろうから捧で突ッついて見よなぞと言い付けると、早速さっそく下男が竹竿たけざおを取り出して来て突こうとするから、たまらない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸の上なる水茶屋には赤き塗盆ぬりぼん手にして佇立たたず茶汲ちゃくみの娘もろとも、床几しょうぎいこふ人々面白げに大道だいどう芸人が子供集めて長き竹竿たけざおの先にたらい廻しゐるさまを打眺めたり。ちゅうの巻ここに尽く。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
手ぬぐい掛けの竹竿たけざおにぬれた手ぬぐいが二筋だけかかっているのを見ると、寝入っている二人ふたりの妹の事がひしひしと心にせまるようだった。葉子の決心はしかしそのくらいの事では動かなかった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
エッケベルク氏の語るところによれば、支那の農夫で都市に行く者は皆、われわれが汚穢おわいと称するところのものを二つのおけにいっぱい入れ、それを竹竿たけざおの両端に下げて持ち帰るということである。
山内家の紋を染めた幕を引き廻した中に、四本の竹竿たけざおてて、上にとまいてある。地面には荒筵あらむしろ二枚の上に、新しい畳二枚を裏がえしに敷き、それを白木綿でおおい、更に毛氈もうせん一枚をかさねてある。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
屋根へのぼってゆく者がある、床下を竹竿たけざおでかき廻している者がある。そこへどこからか、小石が降ってきた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五百両持出させた晩、竹竿たけざおで菊次郎をなぐり殺したが、五百両という小判を持ち運ぶ工夫はない、お銀は舟は漕げないから、川に沈めて竿を立てて目印めじるしにして置いたのだ。
流石さすがの科学探偵波多野警部もここでハタと行詰った体に見えた。彼は入念にも、部下の刑事に竹竿たけざおを持って来させて、井戸の中をかき廻して見たが、無論何の手答えもなかった。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
新吉は、ファットマンの背中の上で、きえちゃんがいつもするようにもう一度見物席けんぶつせきへあいさつをし、それから、わか姉さんのかたの上に立っている竹竿たけざおをするするとのぼって行きました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
見る見るうち満月が木立を離れるに従い河岸かわぎしの夜露をあびたかわら屋根や、水に湿れた棒杭ぼうぐい、満潮に流れ寄る石垣下の藻草もぐさのちぎれ、船の横腹、竹竿たけざおなぞが、逸早いちはやく月の光を受けてあおく輝き出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
でも妹たちの手ぬぐいが二筋ぬれて手ぬぐいかけの竹竿たけざおにかかっていた
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
舞台の上方、一文字幕いちもんじまくかげには、蜘蛛手くもでになって、あらゆるからくり仕掛けが張りめぐらしてある。浅黄幕あさぎまくの太い竹竿たけざお、照明の電球を取りつけたたな、本雨の水道管、紙の雪を降らせるかご
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
両はしをつなにつるされた長い竹竿たけざおはぶるぶるとこまかくふるえています。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
泥の中に突っ立った握り太の竹竿たけざおが一本。