トップ
>
瞑
>
と
ふりがな文庫
“
瞑
(
と
)” の例文
伏せてゐたい時、
瞑
(
と
)
ぢてゐたい時、私は其處にかすかに岩を洗ふ溪川の姿を見、絲の樣なちひさな瀧のひゞくのを聽くのである。
樹木とその葉:36 自然の息自然の声
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
その雨の音を聞きながら、半七は居眠りでもしたように目を
瞑
(
と
)
じていたが、やがて手拭いと傘を持って町内の銭湯へ出て行った。
半七捕物帳:68 二人女房
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いったかと思うと、甲谷はもう眼を
瞑
(
と
)
じて眠り出した。お杉はどうしたものやら分らぬので、寝台の下で甲谷の脱ぎ捨てた服を黙って畳んでいた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しばらく眼を
瞑
(
と
)
じ心をしずめるもののように唇をしっかりと結んでいたが、やがて、かすかに眼をひらいたと思うと
風蕭々
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
云ひ/\てその美しき国の事
遽
(
には
)
かに恋しくやなりけむ、暫し目を
瞑
(
と
)
ぢて、レナウが歌とおぼゆるを
口吟
(
くちずさ
)
み居たりき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
「わしが死んだ? 死んだものが、お前の顔を見たり、こうやってベラベラ
喋
(
しゃべ
)
られるかい。ハッハッハッ」女史は、目を
瞑
(
と
)
じたまま後へ
反
(
そ
)
りかえって笑った。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さながら地獄の無尽焔とも見えたり、目を
瞑
(
と
)
じて静かに考うれば、これまでの無量の罪業ことに阿園の忌中五十日間の心術と所業と、一層明白に浮び来たり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
ただ楽しく……ただ楽しく……三人で幼児のように楽しい日をお送りなさい! と私は眼を
瞑
(
と
)
じて
黙祷
(
もくとう
)
した。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その顔に覗き込まれたように
慄然
(
ぞっ
)
となって、もう矢も楯もなく、私はハッと眼を
瞑
(
と
)
じてしまいました。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
右手を敷いて枕とし、左手を自然に脇腹へ置き、眼を
瞑
(
と
)
じ唇を閉じていた。しかし顔色は蒼かった。益々蒼くなって行った。そうして左手の爪先が、
幽
(
かす
)
かに幽かに
痙攣
(
けいれん
)
した。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
湯槽の中に身体を浸し、眼を
瞑
(
と
)
じた。久しぶりにのびのびした甚だ陶然たる気持であった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
眼
(
め
)
瞑
(
と
)
づれば 氷の上を風が吹く われ石となりて
轉
(
まろ
)
びて行くを
かめれおん日記
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
冷えまさる闇に目を
瞑
(
と
)
ぢ我が居ればおのれ鼠の親なるごとし
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
何事をか思い泛かべるように、半七老人は薄く眼を
瞑
(
と
)
じた。それが老人の癖であると共に、なにかの追憶でもあることを私はよく知っていた。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……(石本は眼を
瞑
(
と
)
ぢて涙を流す。自分も熱い涙の溢るるを禁じ得なんだ。女教師の啜り上げるのが聞えた。)
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
滝人はじっと眼を
瞑
(
と
)
じたまま、それなり動かなくなってしまったのである。生涯謎のままで終るかと思われていたあの疑惑にも、ついに解け去る時機が訪れてきた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
乃公はぐっとこみあげてくるものを、一生懸命に
怺
(
こら
)
えた。でもむかむかとむかついてくる。乃公は目を
瞑
(
と
)
じて、洋盃をとりあげるなり、ぐぐーっと一と息に
嚥
(
の
)
み干した。
不思議なる空間断層
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
なつての後、いかに其處により善く生活してゆくか、本を買ふ、讀書をする、遠慮なく眼を
瞑
(
と
)
ぢて考へ且つ作る、さうした樂しい空想もまた幾度となく心の中に來て宿つた。
樹木とその葉:03 島三題
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
彼女は大兄の腕の中に抱かれたまま、今は
静
(
しずか
)
に眼を
瞑
(
と
)
じて彼の胸の上へ
頬
(
ほお
)
をつけた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
父はしばらく身動きもしなかったが、やがて懐ろの中から鼻紙をとりだし烈しく洟をかんだ。瞬間、彼の横顔がちらっとわたしの視線をかすめた。彼は眼を
瞑
(
と
)
じ、下唇を噛みしめていた。
三等郵便局
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
土は黒い雪のごとく中天に舞いあがり、ぱらぱらと彦太郎の頭上に降って来た。帽子の上に石塊が飛んで来て、
庇
(
ひさし
)
を跳ねた。砂粒が顔にかかって来たので、彦太郎はうつむいて眼を
瞑
(
と
)
じた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
眼
(
め
)
瞑
(
と
)
づれば氷の上を風が吹く我は石となりて
轉
(
まろ
)
びて行くを
和歌でない歌
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
眼を
瞑
(
と
)
じる時こう云ったと看護のある人が公開した。
開運の鼓
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
苦しいのか、面目ないのか、立木につながれた彼は眼を
瞑
(
と
)
じたまま俯向いていた。その話を聴いて庄太はあざわらった。
半七捕物帳:23 鬼娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
将軍は、
胡麻塩
(
ごましお
)
の硬い髯を撫で撫で、目を
瞑
(
と
)
じて、諸報告に聞き
惚
(
ほ
)
れているかのようであった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『解つてよ。』と、静子は聞えるか聞えぬかに言つて、
眤
(
じつ
)
と眼を
瞑
(
と
)
ぢた。其眼から涙が溢れる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ちら/\と寄する小波も全くこんな大海の岸であるとは思はれぬ凪である。見てゐる瞳は自づと
瞑
(
と
)
ざされ吐く呼吸は自づと長く、いつか長々と身體をも横たへたい氣持となる。
樹木とその葉:27 春の二三日
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
打てば
金属
(
かね
)
のように響くかと思われるほどに緊張しきっていたが、
法水
(
のりみず
)
は何か成算のあるらしい
面持
(
おももち
)
で、ゆったりと眼を
瞑
(
と
)
じ黙想に
耽
(
ふけ
)
りながらも、絶えず微笑を
泛
(
うか
)
べ独算気な
頷
(
うなず
)
きを続けていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼はスイッチをひねるとタオルを
喰
(
くわ
)
えて眼を
瞑
(
と
)
じた。身体が刻々に熱くなった。もしこのまま死ねたらとそう思うと、競子の顔が浮んで来た。債鬼の
周章
(
あわ
)
てた顔がちらついた。惨忍な専務の顔が。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
まさしくその眼は
瞑
(
と
)
じていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かたわらに人なきがごとくに談笑自若としていたが、時を経るにつれて眼をそむけて、遂にその眼をまったく
瞑
(
と
)
じた。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「わしは宗じゃ。今忙しいから
後
(
あと
)
にこい」大竹女史が目を
瞑
(
と
)
じたまま、男の声で答えた。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『願くば
御恵
(
みめぐみ
)
を垂れ給へ!』
瞑
(
と
)
ぢた其眼の長い睫毛を伝つて、美しい露が溢れた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
と、N—が酔った眼を
瞑
(
と
)
じて、頭を振りながら云った。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
小柳は眼を
瞑
(
と
)
じて立ち止まった。やがて再び眼をあくと、長い
睫毛
(
まつげ
)
には白い露が光っているらしかった。
半七捕物帳:02 石灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると総監は、しばらく目を
瞑
(
と
)
じて、黙っていたが、やがてしずかに口をひらいた。
第五氷河期
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
更に唯だぢいつと
瞑
(
と
)
ぢてゐたい時もある。
樹木とその葉:36 自然の息自然の声
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「むむ」と、半七は薄く眼を
瞑
(
と
)
じて考えていた。「その男は西からか東からか、早く云えば日本橋の方から来たのか、本所の方から来たのか、それも判らねえかね」
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
催眠術の達人と称する東京通信新聞の佐々記者は、目を
瞑
(
と
)
じたまま苦悶している村の助役古花甚平に向って、なおも一生懸命に呪文を浴せかけたけれど、どうにも風向きはよい方に転じなかった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
(かへでは縋りて泣く。夜叉王は答へず、思案の眼を
瞑
(
と
)
ぢてゐる。日暮れて笛の聲遠くきこゆ。)
修禅寺物語
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
といって目を
瞑
(
と
)
じ、胸に十字を切った。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
(かえでは縋りて泣く。夜叉王は答えず、思案の眼を
瞑
(
と
)
じている。日暮れて笛の声遠くきこゆ。)
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
(男は目を
瞑
(
と
)
じ、腕をくんで、万事休すというが如くに嘆息す。李の夫婦は顔をみあわせる。)
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
幸次郎が出て行ったあとで、半七は又しばらく眼を
瞑
(
と
)
じて考えていた。この一件について、自分は最初から一つの推測を持っているのであるが、それが適中するかどうか。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
掴まれた冬子はと見れば、不意の
驚愕
(
おどろき
)
と
恐怖
(
おそれ
)
とに失神したのであろう、
真蒼
(
まっさお
)
な顔に眼を
瞑
(
と
)
じて、殆ど息も
為
(
し
)
ない。
酔
(
よい
)
も
漸次
(
しだい
)
に醒めたと見えて、お葉の顔も蒼くなって来た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
眼を
瞑
(
と
)
じたり、口のうちで観音さまや阿弥陀仏様を念じたりして、色々に防いでいたのでござりますが、三日目に一度、五日目に一度は、どうしても防ぎ切れなくなりまして
人狼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
眼を
瞑
(
と
)
じて聴いていると、かれの笑い声などはどうしてもほんとうの女であった。それから二、三年の後、新聞紙上に報ぜられたところによると、彼は浅草の自宅で頓死した。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「そうすると、もう一人の同類が無けりゃあならねえ」と、半七は薄く眼を
瞑
(
と
)
じた。
半七捕物帳:48 ズウフラ怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「それもそうですが……。」と、関井さんは少し考えるように眼を
瞑
(
と
)
じていました。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「口を利いてはいけません。眼を
瞑
(
と
)
じておいでなさい」と、舟びとは注意した。
中国怪奇小説集:10 夷堅志(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
瞑
漢検1級
部首:⽬
15画
“瞑”を含む語句
瞑想
瞑目
押瞑
瞑眩
瞑想者
瞑想曲
瞑想家
瞑想的
瞑々
瞑目沈思
晦瞑
沈思瞑目
瞑黙
瞑照燐火
瞑氛
瞑朦
佇立瞑目
趺坐瞑目
瞑想癖
瞑想幽思
...