眞闇まつくら)” の例文
新字:真闇
打越下伊呂村のつゝみへ掛りし時は空もくも眞闇まつくらにて四邊あたりは見えねども急ぎて歸る途中思はず武士さぶらひ突當つきあたり段々樣子を承はりしにつれの女の行衞ゆくゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初めて見た芝居は、私の眼には唯ところ/″\光つて映つて來るやうなものでした。丁度、眞闇まつくらなところにゆらぐ不思議な人形でも見るやうに。
歸路かへり眞闇まつくらしげつたもりなかとほときぼくんなことおもひながらるいた、ぼくあしべらして此溪このたにちる、んでしまう、中西屋なかにしやではぼくかへらぬので大騷おほさわぎをはじめる
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と、ずつと下の廣間ホールで、時計が二時を打つた。ちやうどその時、何だか私の室のドアさはつたものがある。ちやうど、外側の眞闇まつくらな廊下に沿つて、ドアの鏡板を指で手探りでもしたやうに。
かれひざがしらでばひあるきながら座敷ざしきへあがつて財布さいふふところんでふいとた。かれ風呂敷包ふろしきづゝみつてかへつた。かれ戸口とぐちつたときうちなか眞闇まつくら一寸ちよつともの見分みわけもつかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かたりければ夫こそ屈竟くつきやうの事なりとて兩人相談さうだんうへ同く十七年十月二十八日の夜あめは車軸を流し四邊あたり眞闇まつくらなれば是ぞ幸ひなりと兩人は黒裝束くろしやうぞくに目ばかり頭巾づきんにて島屋の店へ忍び入金箱かねばこに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ながせし如く眞闇まつくらやみとなり魔風まふうます/\吹募ふきつの瞬時間またゝくま激浪あらなみは山の如く打上うちあげ打下うちおろ新艘しんざうの天神丸も今やくつがへらん形勢ありさまなり日頃大膽だいたんの吉兵衞始め船頭せんどう杢右衞門十八人の水主かこ水差都合二十一人の者共きも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)