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眞個
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ほんと
此の
髮の
毛を
引拔かれますやうに……
骨身に
應へるやうなんです……
蟲には
濟まないと
存じながら……
眞個に
因果なんですわねえ。
私は
今迄、
朝鮮猫が
始終齒を
露出して
居るなんて
事を
些とも
知りませんでした、
眞個に
知らずに
居ましたわ、
猫が
齒を
露出すなんて
事を
貴方の
祕密が、
私には
知れましても、お
差支へのない
事をお
知らせ
申しませうか、——
餘り
御心配なすつておいとしいんですもの。
眞個に、
殿方はお
優しい。
「あゝ、
聞いて
見てくんねえ、
眞個に
肴ツ
氣が
無くツちやあ、
臺なし
身體が
弱るツていふんだもの。」
「
眞個だよ、
霰だつて、
半分は、
其の
海坊主が
蹴上げて
來る、
波の
潵が
交つてるんだとさ。」
まあ、お
待ちよ、
友さん、
眞個に
可いんだよ。……
決して
邪魔にするんぢやない。
一人の
方が、
何んだか
落着いて、
寂然として、
墓の
松に
吹く
風も
聞えるだらうと
思ふからだよ。
「……
可いとも、
代もの
結構だ。お
前、
眞個にお
庇さまで
男が
立つぜ。」
「
然うかなあ、……
雪女郎つて
眞個にあるんだつてね。」
「
何とも、
御しんせつに……
眞個に
私、」