瓦屋根かはらやね)” の例文
いつも両側のよごれた瓦屋根かはらやね四方あたり眺望てうばうさへぎられた地面の低い場末ばすゑ横町よこちやうから、いま突然とつぜん、橋の上に出て見た四月の隅田川すみだがは
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ふがいなや、くつどのがかぶつた帽子ばうし引捻ひんねぢつてつたとおもふと、片側町かたがはまち瓦屋根かはらやねうへへ、スポンとげて
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
踏切ふみきりのちかくには、いづれもすぼらしい藁屋根わらやね瓦屋根かはらやねがごみごみと狹苦せまくるしくてこんで、踏切ふみきばんるのであらう、ただりうのうすしろはたものうげに暮色ぼしよくゆすつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
烈しい夏の日は空から滑り落ちて來るやうな恐しい瓦屋根かはらやねの見上げる廣い軒に遮られて參詣の人の絶えず昇降あがりおりする階段の、丁度なかばほどまでさし込み
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
勿論そのほか石原いしはら通りや法恩寺橋ほふおんじばし通りにも低い瓦屋根かはらやねの商店はのきを並べてゐたのに違ひない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おい邪魔じやまになるとわるいよと北八きたはちうながし、みちひらいて、見晴みはらしのぼる。にし今戸いまどあたり、ふねみづうへおともせず、ひといへ瓦屋根かはらやねあひだ行交ゆきかさまるばかり。みづあをてんあをし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
瓦屋根かはらやねの高くそびえてるのは古寺ふるでらであつた。古寺ふるでら大概たいがい荒れ果てゝ、やぶれたへいから裏手うらて乱塔場らんたふばがすつかり見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
れた樹木じゆもくかわいた石垣いしがきよごれた瓦屋根かはらやね、目にるものはこと/″\せた寒い色をしてるので、芝居しばゐを出てから一瞬間しゆんかんとても消失きえうせない清心せいしん十六夜いざよひ華美はでやかな姿すがた記憶きおく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)