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うつしみ
ふりがな文庫
“
現身
(
うつしみ
)” の例文
孫悟空に凝って、
金箍棒
(
きんこぼう
)
や
羅刹女
(
らせつにょ
)
の
芭蕉扇
(
ばしょうせん
)
をありありと目に見た子供は、やがて原子の姿をも
現身
(
うつしみ
)
の形に見ることが出来るであろう。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
私の健康さの全部のものを作品に捧げつくして、その残りカスが私というグウタラな
現身
(
うつしみ
)
なのだよ、と誇示し得ないこともないのである。
わが精神の周囲
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
形よりも影、体よりも光り、姿よりも匂いで、人の
見
(
まみ
)
ゆる方が多くなった。水にひたす影に於てこそ、もっとも女神の
現身
(
うつしみ
)
をみることができる。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ぴよぴよと啼くは
雛鶏
(
ひなどり
)
。雀子はちゆちゆとさへづり、子を思ふ焼野の
雉子
(
きぎす
)
けんけんと夜も高音うつ。
現身
(
うつしみ
)
の鳥の啼く
音
(
ね
)
のなぞもかく物あはれなる。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そうしているうちに、南郷綾麿の心もまた、少しずつではあったにしても、
現身
(
うつしみ
)
の温かい血肉を盛った、香折の可憐さに傾いて来たことも事実でした。
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
けれどかれは、夜も抱き、昼も抱き——抱いて、とろとろと、まどろむときは、夢のなかに
現身
(
うつしみ
)
の袈裟をみた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けんめいに
現身
(
うつしみ
)
の若者に肖せることに熱中し、じじつそれに成功したというのに、いまは見れば見るほどその肖ていることじたいが浅間しく、自分を怖気だたせるのだ。
菊
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
人の
現身
(
うつしみ
)
は、あまりにも大きい歓喜の原因に堪えかねて、正反対の感覚・感情をもつのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
それは
現身
(
うつしみ
)
の死にこそ似てゐるだらう。ナルシシスムは無理に日本語に譯せば、自己陶醉とか
自惚
(
うぬぼ
)
れとかいふことになつてしまふらしいが、本來的には畢竟、自己注視に歸する宿命をもつてゐる。
三島由紀夫:ナルシシスムの運命
(旧字旧仮名)
/
神西清
(著)
『
現身
(
うつしみ
)
のうれしき糧は酒なり』とまなこにつげといふはわれなり
小熊秀雄全集-01:短歌集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「
現身
(
うつしみ
)
のもろき
生命
(
いのち
)
の思ひつつ常のつつしみかりそめならず」
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ものなべて
過
(
す
)
ぎゆかむもの
現身
(
うつしみ
)
はしづかに
生
(
い
)
きてありなむ
吾
(
われ
)
よ
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
めしをくはねば生きてゆかれぬ
現身
(
うつしみ
)
の世は
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
智恵子は
現身
(
うつしみ
)
のわたしを見ず
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
然し、家康の影は、彼の
現身
(
うつしみ
)
と対応せず、その凋落の跫音と差しむかひ、朝鮮役の悔恨や又諸々の悔恨の影の向ふに立つてゐた。
我鬼
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
の人の
聖
(
ひじり
)
と
現身
(
うつしみ
)
の鳥の雀と、雀とフランチエスコと、朝夕に常かくなりき。あなあはれ、世の
常
(
つね
)
の事にはあらずよ。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
血管のなかにはまだ夜来の酒気もそのまま
香
(
かお
)
っているかのような夢中と
現身
(
うつしみ
)
の境に、彼の
脳裡
(
のうり
)
には、南方の島々や
高麗
(
こうらい
)
の沿海や、ゆくてに
大明国
(
だいみんこく
)
をさしている大船列や
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
うつしみは
現身
(
うつしみ
)
ゆゑに
嘆
(
なげ
)
かむに山がはのおともあはれなるかも
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
私のうらぶれた
現身
(
うつしみ
)
に、影ほど好ましきものは無いのです。影は人の心であります、そして又、人のふるさとであります。
帆影
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
の人の
聖
(
ひじり
)
と
現身
(
うつしみ
)
の鳥の雀と、雀とフランチェスコと朝夕に常かくなりき。あなあはれ、よの
常
(
つね
)
の事にはあらずよ。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
眼がさめるとまた、かえって夢よりも切実に
恐
(
こわ
)
い
現身
(
うつしみ
)
に
回
(
かえ
)
って、
惻々
(
そくそく
)
と
責
(
せ
)
め
虐
(
さいな
)
まれた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鴎等
(
かもめら
)
はためらひもなく今ぞ飛ぶ
嫉
(
ねた
)
くしおもふ
現身
(
うつしみ
)
われは
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
私のインチキ小説よりも、もつと激しく、私のインチキな
現身
(
うつしみ
)
、イノチに絶望してゐた。私は私のイノチよりも、むしろ七百枚の小説を信頼した。
再版に際して〔『吹雪物語』〕
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
かおかおと啼くは鴉、ぴよぴよと啼くは
雛鶏
(
ひなどり
)
、雀子はちゆちゆとさへづり、子を思ふ焼野の
雉子
(
きぎす
)
、けんけんと
夜
(
よ
)
も
高音
(
たかね
)
うつ。
現身
(
うつしみ
)
の鳥の啼く
音
(
ね
)
の、なぞもかく物あはれなる。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
大詩人だの大音楽家だのと云ったって、その他人にすぐれているのは詩と音楽についてのことで、ナマの
現身
(
うつしみ
)
はそうは参らん。現身はみんな同じこと。
安吾人生案内:06 その六 暗い哉 東洋よ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
アッシジの
聖
(
ひじり
)
フランチェスコの物語。フランチェスコは雀子を
愛
(
を
)
しみ
給
(
たま
)
ひき。雀子も慕ひまつりき。
現身
(
うつしみ
)
の人にてませば、かの人も
亦
(
また
)
人のごと寂しくましき。寂しくて貧しくましき。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
我々の
現身
(
うつしみ
)
は、道に迷へば、救ひの家を予期して歩くことができる。けれども、この孤独は、いつも曠野を迷ふだけで、救ひの家を予期すらもできない。
文学のふるさと
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
アツシジの
聖
(
ひじり
)
フランチエスコの物語。フランチエスコは雀子を
愛
(
を
)
しみ給ひき。雀子も慕ひまつりき。
現身
(
うつしみ
)
の人にてませば、かの人も
亦
(
また
)
、人のごと寂しくましき。寂しくて貧しくましき。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私の「
現身
(
うつしみ
)
」にとつて、それが私の真実の生活であるか、虚偽の生活であるか、といふことだけが全部であつた。
いづこへ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
は生きて
朝間
(
あさま
)
ぞすずしけれ愚かなりけり死にてむなしさ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
我々の
現身
(
うつしみ
)
は、道に迷えば、救いの家を予期して歩くことができる。けれども、この孤独は、いつも曠野を迷うだけで、救いの家を予期すらもできない。
文学のふるさと
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
は生きて
朝間
(
あさま
)
ぞすずしけれ愚かなりけり死にてむなしさ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私の「
現身
(
うつしみ
)
」にとって、それが私の真実の生活であるか、虚偽の生活であるか、ということだけが全部であった。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
の馬にて
在
(
ま
)
せば観世音
灸
(
きう
)
すゑられてありにけるかも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
現身
(
うつしみ
)
の幸を望まず、一命を天主にさゝげ、死後の幸福を信じるからで、神の存在を信じなくてこのやうなことが出来る筈がありませうや、と見得を切つた。
鉄砲
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
の泥豚の児が啼いて居りその泥豚の児と児重なり
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
まつたくこの作者の
現身
(
うつしみ
)
は破局に身を沈めてをり、淪落のどん底に落ち、地獄の庭を歩いてゐたに相違ない。この地獄をくゞらなければ人間の傑作は書き得ないのだ。
蟹の泡
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
は春も
背
(
そびら
)
の
経絡
(
けいらく
)
に火をつづらせて
愛
(
かな
)
しがるなり
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
すくなくともタクミにとってはそれが全てであるし、オレの
現身
(
うつしみ
)
にとってもそれが全てであろう。
夜長姫と耳男
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
現身
(
うつしみ
)
のうつしごころのあはれなり。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そしてかかる日本の封建思想を完成せしめた孔子は実に自由人であり、永遠の現代人であり、
而
(
しこう
)
して彼の
現身
(
うつしみ
)
は保守家ではなく、反逆者であつた。彼は自由を闘つた反逆者だ。
私の小説
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
身ははやも
現身
(
うつしみ
)
はなし
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
自分の死後の私などに何の夢も
托
(
たく
)
していなかった老人に就て考え、石がその悲願によって人間の姿になったという「
紅楼夢
(
こうろうむ
)
」を、私自身の
現身
(
うつしみ
)
のようにふと思うことが時々あった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
人間の
現身
(
うつしみ
)
などはタカの知れたものだ。深刻ぶらうと、茶化さうと、芸術家は芸術自体だけが問題ではないか。誰だつて、無名よりは有名がよからう、金のないより、有る方がよい。
大阪の反逆
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
人間の
現身
(
うつしみ
)
などはタカの知れたものだ。深刻ぶろうと、茶化そうと、芸術家は芸術自体だけが問題ではないか。誰だって、無名よりは有名がよかろう、金のないより、有る方がよい。
大阪の反逆:――織田作之助の死――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
舞台の上に新しく生れた一人物になりきって、己れの
現身
(
うつしみ
)
を捨てきらねばならぬ。舞台の芸術はそういうものだが、異性に扮することは、すでに出発からそのタテマエに沿うているのだ。
安吾の新日本地理:08 宝塚女子占領軍――阪神の巻――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
芸術が
現身
(
うつしみ
)
に負けることが、私はどうにもやりきれない。私は現実を殺したい。
手紙雑談
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
私の
現身
(
うつしみ
)
が休みたいといふのではない。ちやうど墓と同じやうに私の死後が休みたいのだ。そのやうに私はもはや無気力だ。私は現身を希つてゐない。むしろ自然に希ふことができないのだね。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼女が私の
現身
(
うつしみ
)
に見出し、見すくめ、意地わるくその底までもシャブリつゞけていたものは、私が見つめていた彼女の女体よりも、もっと俗世的な、救いのないものではなかったかと私は思った。
三十歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
要するにナマの写実やナマの
現身
(
うつしみ
)
は芸ではないと云っても、それは人間についてのことで、二人の人間が馬の着物をかぶって一匹の馬になったツモリらしくシャン/\と鈴をならして現れる怪物は
安吾の新日本地理:08 宝塚女子占領軍――阪神の巻――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
“現身”の意味
《名詞》
現世に生きているこの身。現在の姿。
応身。現身仏。
(出典:Wiktionary)
現
常用漢字
小5
部首:⽟
11画
身
常用漢字
小3
部首:⾝
7画
“現”で始まる語句
現
現在
現場
現世
現今
現象
現場不在証明
現実
現代
現金