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猛犬
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まうけん
此遊歩の
間、
武村兵曹の
命ずる
儘に、
始終吾等の
前になり、
後になつて、
豫め
猛獸毒蛇の
危害を
防いで
呉れた、
一頭の
猛犬があつた。
此の
猛犬は、——
土地ではまだ、
深山にかくれて
活きて
居る
事を
信ぜられて
居ます——
雪中行軍に
擬して、
中の
河内を
柳ヶ
瀬へ
拔けようとした
冒險に、
教授が
二人、
某中學生が十五
人
其
重価を
得んと
欲して
春暖を
得て雪の
降止たるころ、
出羽あたりの
猟師ども五七人心を合せ、三四疋の
猛犬を
牽き米と
塩と
鍋を
貯へ、水と
薪は山中
在るに
随て用をなし、山より山を
越
其傍には、
日出雄少年は、
例の
水兵姿で、
左手は
猛犬「
稻妻」の
首輪を
捕へ、
右手は
翩飜と
海風に
飜へる
帝國軍艦旗を
抱いて、その
愛らしい、
勇ましい
顏は、
莞爾と
此方を
仰いで
居つたよ。