じょう)” の例文
凡そ文芸の歴史は必ず各時代の傑出せる一家を中心としてあたかも波浪の起伏するが如きじょうをなし、漸次に時代の推移を示すものなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それをおとよはどうしても、ようございますといわないから、父のじょうが少しも立たない。それが無念でたまらぬのだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
加賀見忍剣かがみにんけんどのへ知らせん このじょうを手にされし日 ただちに錫杖しゃくじょうを富士の西裾野にしすそのへむけよ たずねたもう御方おんかたあらん 同志どうしの人々にも会いたまわん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
溥洽ふこうは建文帝の主録僧しゅろくそうなり。初め帝の南京なんきんに入るや、建文帝僧となりてのがれ去り、溥洽じょうを知ると言うものあり、あるいは溥洽の所にかくすとうあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時雄はその姿と相対して、一種じょうすべからざる満足を胸に感じ、今までの煩悶はんもんと苦痛とを半ば忘れて了った。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
竹間ちくかん梅棕ばいそう森然しんぜんとして鬼魅きび離立笑髩りりつしょうひんじょうのごとし。二三子相顧あいかえりみ、はく動いていぬるを得ず。遅明ちめい皆去る
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「上松の在と黒川、宮之越、この三カ所の牧場にじょうがつけてある、くわしくは是れに書いて来たから」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お浜はそっとその一つを手に取って見ると、それは宇津木兵馬からのはたじょうでありました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かの狗子白毛にて黒斑こくはん惶々乎こうこうことし屋壁に踞跼きょきょくし、四肢を側立て、眼を我に挙げ、耳と尾とを動かして訴えてやまず。その哀々あいあいじょう諦観視するに堪えず。彼はたして那辺なへんより来れる。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
海保漁村の墓誌はその文が頗る長かったのを、豊碑ほうひを築き起して世におごるが如きじょうをなすは、主家に対してはばかりがあるといって、文字もんじる四、五人の故旧が来て、胥議あいぎして斧鉞ふえつを加えた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
されど或時は全くその反対に、人物奮闘のじょうを描ける図に至つては色彩をしてこれと一致せしめんがため殊更ことさら多数の色を設けて衝突混乱せしむ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
兼吉は、腕力わんりょくでは花前によりつけないから、五郎に加勢かせいたのんだのだ。事実じじつは兼吉が牛をたたいたのかもしれないが、ふたりのいいじょうはそうであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
みなもとわたるは、院の武者所のうちでも、同年輩のごく親しい友、十名ほどに、じょうをまわして
寛保かんぽう延享えんきょうの頃の漆絵うるしえ紅絵べにえには早くも西洋風の遠近法を用ひてたくみ遠見とおみの景色と人物群集のじょうとを描きいだせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
じょうでは、久しく見えなんだ俊基朝臣としもとあそんも、今日はお顔を出されるとか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しさいにたのじょうを書いておきますでの……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じょう書けっ。なにっ、なにを笑う」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)