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無疵
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むきず
ふりがな文庫
“
無疵
(
むきず
)” の例文
どうかすると、その街が何ごともなく
無疵
(
むきず
)
のまま残されること、——そんな虫のいい、愚かしいことも、やはり考え浮ぶのではあった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
見のがして下さりさえすりゃあ、この娘を
無疵
(
むきず
)
で、このまますんなりお返し申すんでございますが、いかがなもんでござんしょう
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの辺は小鳥の多いところで、私は吹矢を使って飛んでいる小鳥の羽根を
縫
(
ぬ
)
い、
無疵
(
むきず
)
のままで生捕りにする修業を積みました。
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして其角は江戸名所の
中
(
うち
)
唯ひとつ
無疵
(
むきず
)
の名作は快晴の富士ばかりだとなした。これ恐らくは江戸の風景に対する最も公平なる批評であろう。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ヨブもとより
己
(
おのれ
)
を以て完全
無疵
(
むきず
)
とはしない。しかしながらこのたびの
災禍
(
わざわい
)
がある隠れたる罪の結果なりとは、彼において全然覚えなき事であった。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
▼ もっと見る
九州に窯は沢山ありますが、おそらくこの日田の皿山ほど、
無疵
(
むきず
)
で昔の面影を止めているところはないでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ここも今代の工芸美術の標本でありまた一般の趣味
好尚
(
こうしょう
)
の代表である。なんでもどちらかと言えばあらのない、すべっこい
無疵
(
むきず
)
なものばかりである。
丸善と三越
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
なるほど石橋スパセニア(二十歳)は
無疵
(
むきず
)
の
溺死体
(
できしたい
)
であるが、石橋ジーナ(二十三歳)は額に盲管銃創を負っている。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
次いでは甘糟の四百円、大島紬氏は卒業前にして百五十円、
後
(
ご
)
に又二百円、
無疵
(
むきず
)
なるは風早と荒尾とのみ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私もあなたのやうに善良で——
賢
(
かしこ
)
くて——殆んど
無疵
(
むきず
)
な人間になつてゐたかも知れない。あなたのその心の平和、その澄んだ良心、その
汚
(
よご
)
れのない追憶が羨しい。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
かかる中にも慌てず騒がず、彼に従ってしかもなお
無疵
(
むきず
)
の精兵を部下に持っていたのはかの
馬岱
(
ばたい
)
だった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おまけに二度とも機体だけが、不思議に
無疵
(
むきず
)
のまま落ちていたという
曰
(
いわ
)
く付きのシロモノなんだ。
怪夢
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
折れた足を継ぎ、
無疵
(
むきず
)
にして、私の守り本尊の這入っている観音の
祠
(
ほこら
)
(これは前におはなしした観音です)の中へ入れて飾って置きました。これは西町時代のことであります。
幕末維新懐古談:75 不動の像が縁になったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その実は彼等の
考
(
かんがえ
)
に、緒方の書生に解剖して貰えば
無疵
(
むきず
)
に
熊胆
(
くまのい
)
が取れると云うことを知て居るものだから、解剖に託して
熊胆
(
くまのい
)
が出るや
否
(
いな
)
や
帰
(
かえっ
)
て仕舞たと云う事がチャンと
分
(
わかっ
)
たから
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
よごれものがたまって新らしい茶碗の縁が三日と
無疵
(
むきず
)
で居たためしがないとなあ、三十九にもなって何てこったし、あまり昼、夫婦づれで、
仮寝
(
うたたね
)
ばかりしているからだなっし、貴方。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
こうやって見ると
無疵
(
むきず
)
な人間は幸福だ、
只
(
ただ
)
さえ歩きにくい岩路を下りるのに、片手はまるで感覚がないのに、上からギリギリ繃帯されてるから、胸が圧されて息苦しくてたまらない
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
これは
古渡
(
こわた
)
りの
無疵
(
むきず
)
で
斑紋
(
けら
)
のない
上玉
(
じょうだま
)
で、これを差上げ様と存じます……お根付、へい左様で、
鏡葢
(
かゞみぶた
)
で、へい矢張り
青磁
(
せいじ
)
か何か時代のがございます、
琥珀
(
こはく
)
の様なもの、へえ
畏
(
かしこま
)
りました
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何の奧樣一の忠義振かと腹は立どさすが
襟
(
えり
)
かき合せ店に奧に二度三度心ならずもよろこび述て扨孃樣よりと、
包
(
つゝみ
)
ほどけば、父親の
好
(
このみ
)
戀人の意匠、おもとの
實
(
み
)
七づゝ四分と五分の
無疵
(
むきず
)
の珊瑚
うづみ火
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「それじゃ今度は帝大出の
無疵
(
むきず
)
ものを持って参りましょう」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
無疵
(
むきず
)
な
魂
(
もの
)
なぞ何処にあらう?
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
一端に
罠
(
わな
)
を作つて、その罠が
鋏
(
はさみ
)
で切られてあり、お萬の部屋から見付け出したのは、全くの
無疵
(
むきず
)
で、心持お縫を縛つたのより古びを持つて居ることでした。
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
わが信仰の純正とわが行為の
無疵
(
むきず
)
とに
恃
(
たの
)
む、これ何の時にもあるオルソドクシー(いわゆる正統教)である。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
……しかし、
茶盌
(
ちゃわん
)
でも、あまり
無疵
(
むきず
)
は
風情
(
ふぜい
)
がない。たれにも
一癖
(
ひとくせ
)
はあるものよ。それも凡物の
大疵
(
おおきず
)
は困りものだが、藤吉郎ほどな男は、数ある男のうちでまず少ない
器
(
うつわ
)
だろう。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その他の足袋の底と着物の裾に、すこしばかり泥が附いているだけで、
轢死体
(
れきしたい
)
としては珍らしく
無疵
(
むきず
)
な肉体が、草の中にあおのけに寝て、
左手
(
ゆんで
)
はまだシッカリと前裾を掴んでいた。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
左側の
眼蓋
(
まぶた
)
の上に出血があったが、
殆
(
ほとん
)
ど
無疵
(
むきず
)
といっていい位、
怪我
(
けが
)
は軽かった。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
かく
無疵
(
むきず
)
なる聖賢を造り出だすべきや、なんらの教育を施せばかく結構なる民を得べきや、唐人も周の世以来しきりにここに心配せしことならんが、今日まで一度も注文どおりに治まりたる時はなく
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「私も増屋佐五兵衛だ、いかにも百両出しましょう。
無疵
(
むきず
)
のままで、あの茶釜が手に入ったら」
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
……前代未聞の恐ろしい殺人事件のあった家……四人の
無疵
(
むきず
)
の死骸に護られた
室
(
へや
)
……その四人を殺した不可思議な女の霊魂の住家……奇蹟の墓場……恐怖の
室
(
へや
)
……
謎語
(
めいご
)
の神殿……そんな感じを
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
堺の町人は、歡喜天は欲しいが、兩體とも揃つて、
無疵
(
むきず
)
のまゝでなければいけない——と
斯
(
か
)
う申します。御存じの通り女體の方は、額の夜光石をゑぐり取られて居ります。
銭形平次捕物控:330 江戸の夜光石
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ところが、小艶のこめかみに突つ立つた吹矢の羽根は、
無疵
(
むきず
)
の美濃紙で、喰ひ切つた跡もなく紅も附いちやゐません、——役所で見せて貰つたんだから、こいつは間違ひありません」
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「何だ、
無疵
(
むきず
)
の身体じゃないか、色が白いだけじゃ通用しねえ、
退
(
ど
)
いた退いた」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ところが、小艶のこめかみに突っ立った吹矢の羽根は、
無疵
(
むきず
)
の美濃紙で、喰い千切った跡もなく紅も付いちゃいません、——役所で見せて貰ったんだから、こいつは間違いありません」
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「何だ、
無疵
(
むきず
)
の身體ぢやないか。色が白いだけぢや通用しねえ、
退
(
ど
)
いた/\」
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「先を言つちやなほいけねえ、——飴色の
無疵
(
むきず
)
の
龜甲
(
べつかふ
)
の櫛、少し大振りなところを見ると、金のありあまる年増か女房の持ち物だ。——馬の爪で拵へた
擬
(
まが
)
ひ物と違つて、あれは安い
代物
(
しろもの
)
ぢやねえ」
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
疵
漢検1級
部首:⽧
10画
“無”で始まる語句
無
無暗
無頓着
無理
無垢
無花果
無事
無聊
無造作
無慙