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本宅
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ほんたく
なーる
程、にこやかで
頬の
膨れてゐる
所なんぞは
大黒天の
相があります、それに
深川の
福住町の
本宅は
悉皆米倉で
取囲てあり、
米俵も
積揚て
在るからですか。
本宅は
三番町の
何處やらにて
表札を
見ればむゝ
彼の
人の
家かと
合點のゆくほどの
身分、
今さら
此處には
言はずもがな、
名前の
恥かしければ
病院へ
入れる
事もせで
松ばかりにても
見惚るゝやうなりとほゝ
笑めば、
否や
別莊にはあらず
本宅にておはすなりと
答ふ、
是を
話しの
糸口として、
見惚れ
給ふは
松ばかりならず、
美くしき
御主人公なりといふ
置ては
別莊守りの
夫婦のみなれど
最愛の
娘病氣との
事なり
本宅よりの
使ひ
絶ま
無ければ
事によそへて
杉原のこと
問はするに
本宅にも
此頃さらに
參り
給はずといふ
左るにても
何とし
給ひしにや
我心を
待たば
空の
月の
逢みるべきぞとならば
嬉しけれど
若しやの
願ひに
左樣見ゆるにや
寧そ
愁らからば一
筋ならで
頼みのある
丈まどはるゝなり
扨もお
便りの
聞えぬは
何故我れ
厭はせ
給ひなば
此處へこそ
御入來なく
共本宅へまで
御踈遠とは