明瞭はつきり)” の例文
念佛ねんぶつにごつたこゑあかるくひゞいた。地上ちじやうおほうたしも滅切めつきりしろえてれうにはてられた天棚てんだな粧飾かざりあかあをかみ明瞭はつきりとしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
踊をモ一つ所望した小松君の横顏、……それから、市子の顏を明瞭はつきり描いて見たいと云ふ樣な氣がして、折角努めて見たが、怎してか浮んで來ない。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
細い路次ろじを通つて、うちの前まで來ると、表の戸は一昨日おとゝひ締めて行つたまゝである。何處をほつき𢌞つてゐたのか、宛然まるで夢中で、自分にも明瞭はつきりおぼへがない。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
けれどいくら考へても、庭園や附屬館のあるやしきかまへを、明瞭はつきりした圖に描くことは出來なかつた。××州・ミルコオト。私は英吉利の地圖の記憶を掻き探した。
然し汝に感服したればとて今直に五重の塔の工事しごとを汝に任するはと、軽忽かるはずみなことを老衲の独断ひとりぎめで云ふ訳にもならねば、これだけは明瞭はつきりとことわつて置きまする
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その明るさが室の内を照らし出すと、幾分頭腦あたま明瞭はつきりしたやうで先刻さつき途中で買つて來た菓子の袋を袂から取り出して茶道具を引寄せた。そして自分は湯を貰ひに二階から勝手に降りた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
そのくせ、極く小さな事で、忘れないで居るやうなことは、それが昨日あつたと言ふよりはつい今日あつたことのやうに、明瞭はつきりと、しかも微細な點まで、實に活々と感ぜられるのですが……
うとも』とつて公爵夫人こうしやくふじんは『なか/\明瞭はつきりとおまへ物事ものごと判別はんべつする!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「うむ、さうだあ、そんだからさあつとがさ/\すんだよ」ういつておつぎのこゑすこ明瞭はつきりとしてた。おつぎははぢふくんだ容子ようすつくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何を教へて居るのか、自分にも明瞭はつきり解らぬ。解らぬが、然し何物かを教へて居る。朝起きるから夜枕につくまで、一生懸命になツて其何物かを教へて居る。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その理由は彼自身にも明瞭はつきりしなかつた。
歯痛 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何を教へて居るのか、自分にも明瞭はつきり解らぬ。解らぬが、然し何物かを教へて居る。朝起きるから夜枕につくまで、一生懸命になツて其何物かを教へて居る。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
卯平うへいはそれでもおつぎのこゑくとつぶつたまゝほとん明瞭はつきりとはられぬやうなかすかなわらひがうかぶのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何方どつちが先で、何方があとだつたのか、明瞭はつきりとは思出し難い。が私は六歳で村の小學校に上つて、二年生から三年生に進む大試驗に、私の半生に唯一度の落第をした。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何方どつちが先で、何方が後だつたのか、明瞭はつきりとは思出しにくい。が私は六歳で村の小学校に上つて、二年生から三年生に進む大試験に、私の半生に唯一度の落第をした。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『然うで御座いますねえ。』とお利代は大きい眼をしばたたき乍ら、未だ明瞭はつきりと自分の心を言出しかねる様で
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
雀躍こをどりする様に身体を揺がして、踊をモ一つと所望した小松君の横顔、……それから、市子の顔を明瞭はつきり描いて見たいと云ふ様な気がして、折角努めて見たが、怎してか浮んで来ない。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは其人が、己れの意志でやつた事か、私が命令してやらした事か明瞭はつきりしない。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何日か何処かで叩かれてゐるのを見た事もある様だが、それは明瞭はつきりしない。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何時いつか何處かで叩かれてゐるのを見た事もある樣だが、それは明瞭はつきりしない。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一年中最も樂しい秋の盛岡——大穹窿てんじやうが無邊際に澄み切つて、空中には一微塵の影もなく、田舍口から入つて來る炭賣薪賣の馬の、冴えた/\鈴の音が、市の中央まんなかまで明瞭はつきり響く程透徹であることや
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一年中最も楽しい秋の盛岡——大穹窿だいきゆうりゆうが無辺際に澄み切つて、空中には一微塵いちみじんの影もなく、田舎口から入つて来る炭売薪売まきうりの馬の、冴えた/\鈴の音が、まち中央まんなかまで明瞭はつきり響く程透徹であることや
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「先刻の話」と云ふ語は熱して居る野村の頭にも明瞭はつきりと聞えた。支廳の戸川に打合せる話なら俺の事ぢやない。ハテそれでは何の事だらうと頭を擧げたが、何故か心が臆して竹山に聞きもしなかつた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「先刻の話」と云ふことばは熱して居る野村の頭にも明瞭はつきりと聞えた。支庁の戸川に打合せる話なら俺の事ぢやない。ハテそれでは何の事だらうと頭を挙げたが、何故か心が臆して竹山に聞きもしなかつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『ああ、さうですか。安井君が。』さういふ言葉が明瞭はつきりと聞えた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、明瞭はつきり言放つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)