トップ
>
擲
>
たた
ふりがな文庫
“
擲
(
たた
)” の例文
彼は、警察署に行くと、捕えられて来ていたその男を死ぬ程
擲
(
たた
)
きのめし、自分は程近い地下鉄道に轢かれて命を落してしまったのです。
「母の膝の上に」(紹介並短評)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少年 お姉様! (馳せ行きて扉を
擲
(
たた
)
く)お姉様! (ヨハナーンの呼び声のみ反響す)お姉様よう。……(泣く。泣く声のみ反響す)
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
名刺こそ飛んだ
厄運
(
やくうん
)
に際会したものだと思う
間
(
ま
)
もなく、主人はこの野郎と吾輩の
襟
(
えり
)
がみを
攫
(
つか
)
んでえいとばかりに
椽側
(
えんがわ
)
へ
擲
(
たた
)
きつけた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思ふさまに
擲
(
たた
)
かれて
蹴
(
け
)
られてその二三日は立居も苦しく、夕ぐれ
毎
(
ごと
)
に
父親
(
てておや
)
が
空車
(
からぐるま
)
を五十軒の茶屋が軒まで運ぶにさへ、三公はどうかしたか
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
少年は奪うように手に取ると、窓際へ寄って、何か走り書きしたと思うと、今度は急に
擲
(
たた
)
きつけるような恰好をした。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
お前が分別さえ
更
(
か
)
えれば妾がすぐにも親方様のところへ行き、どうにかこうにか
謝罪
(
あやまり
)
云うて一生懸命精一杯、
打
(
ぶ
)
たれても
擲
(
たた
)
かれても動くまいほど覚悟をきめ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「なんて君まで婆さんの肩を持った日にゃ、僕はいよいよ主人らしからざる心持に成ってしまわあ」と飲みさしの
巻煙草
(
まきたばこ
)
を火鉢の灰の中へ
擲
(
たた
)
き込む。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大急ぎで
擲
(
たた
)
きつけるような人々を
憚
(
はばか
)
って、擲きつけられるのをこわがって、私の道を曲げ、
怯
(
ひる
)
んではいられません。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あんな奴を生して置くより
擲
(
たた
)
きころす方が世間のためだ、
己
(
おい
)
らあ今度のまつりにはどうしても乱暴に仕掛て取かへしを付けようと思ふよ、だから信さん友達がひに
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
五六日は
身体
(
からだ
)
が悪いって
癇癪
(
かんしゃく
)
ばかり起してネ、おいらを
打
(
ぶ
)
ったり
擲
(
たた
)
いたりした代りにゃあ酒買いのお使いはせずに
済
(
す
)
んだが、もう
癒
(
なお
)
ったからまた
今日
(
きょう
)
っからは毎日だろう。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この邪魔ものの一局部へ頭を
擲
(
たた
)
きつけて、せめて
罅
(
ひび
)
でも入らしてやろうと——やらないまでも時々思うのは、早く
華厳
(
けごん
)
の
瀑
(
たき
)
へ行きたいからであった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
よくもお祭りの
夜
(
よ
)
は正太さんに
仇
(
あだ
)
をするとて私たちが遊びの邪魔をさせ、罪も無い三ちやんを
擲
(
たた
)
かせて、お前は高見で
采配
(
さいはい
)
を振つてお
出
(
いで
)
なされたの、さあ
謝罪
(
あやまり
)
なさんすか、何とで御座んす
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そもそも最初に
汝
(
おのれ
)
めがわが
対岸
(
むこう
)
へ廻わりし時にも腹は立ちしが、じっと
堪
(
こら
)
えて争わず、
普通大体
(
なみたいてい
)
のものならばわが
庇蔭
(
かげ
)
被
(
き
)
たる身をもって一つ仕事に手を入るるか、打ち
擲
(
たた
)
いても飽かぬ奴と
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その太鼓は最も無風流な最も殺風景な音を出して、前後を切り捨てた上、中間だけを、
自暴
(
やけ
)
に夜陰に向って
擲
(
たた
)
きつけるように、ぶっきら棒な鳴り方をした。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無法に住して放逸
無慚
(
むざん
)
無理無体に暴れ立て暴れ立て進め進め、神とも戦え仏をも
擲
(
たた
)
け、道理を
壊
(
やぶ
)
って壊りすてなば天下は我らがものなるぞと、
叱咜
(
しった
)
するたび土石を飛ばして
丑
(
うし
)
の刻より
寅
(
とら
)
の刻
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さのみ珍らしいとは思ひませぬけれど
出際
(
でぎは
)
に召物の
揃
(
そろ
)
へかたが悪いとて
如何
(
いか
)
ほど詫びても聞入れがなく、
其品
(
それ
)
をば脱いで
擲
(
たた
)
きつけて、御自身洋服にめしかへて、
吁
(
ああ
)
、私
位
(
ぐらゐ
)
不仕合の人間はあるまい
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「生活にですか、ええ、そりゃ困ってるんです。しかし
無暗
(
むやみ
)
に金をやろうなんていったら
擲
(
たた
)
きつけますよ」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はそれまで
躊躇
(
ちゅうちょ
)
していた自分の心を、
一思
(
ひとおも
)
いに相手の胸へ
擲
(
たた
)
き付けようかと考え出しました。私の相手というのはお嬢さんではありません、奥さんの事です。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
バッタの癖に人を驚ろかしやがって、どうするか見ろと、いきなり
括
(
くく
)
り
枕
(
まくら
)
を取って、二三度
擲
(
たた
)
きつけたが、相手が小さ過ぎるから勢よく
抛
(
な
)
げつける割に
利目
(
ききめ
)
がない。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おれはいきなり袂へ手を入れて、玉子を二つ取り出して、やっと云いながら、野だの面へ
擲
(
たた
)
きつけた。玉子がぐちゃりと割れて鼻の先から黄味がだらだら流れだした。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
健三は
擲
(
たた
)
き付けるようにこういって、また書斎へ入った。其所には鉛筆で一面に
汚
(
よご
)
された紙が所々赤く染ったまま机の上で彼を待っていた。彼はすぐ
洋筆
(
ペン
)
を取り上げた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある時
将棋
(
しょうぎ
)
をさしたら
卑怯
(
ひきょう
)
な
待駒
(
まちごま
)
をして、人が困ると
嬉
(
うれ
)
しそうに冷やかした。あんまり腹が立ったから、手に在った飛車を
眉間
(
みけん
)
へ
擲
(
たた
)
きつけてやった。眉間が割れて少々血が出た。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「休むさ。学校なんか」と
擲
(
たた
)
きつけるように云ったのは
壮
(
さかん
)
なものだった。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
擲
漢検1級
部首:⼿
18画
“擲”を含む語句
打擲
放擲
抛擲
擲倒
擲附
擲弾兵
手擲弾
投擲
擲殺
擲出
擲却
乾坤一擲
一擲
御打擲
擲弾
酒銭擲三緡
革擲
擲銭卜
書擲
横擲
...