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御不自由
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ごふじいう
アヽお
歸りかと
起返る
母、お
父さんは
御寢なツてゞすかさぞ
御不自由で
御座いましたらう
何もお
變りは
御座いませんかと
裏問ふ
心は
疵もつ
足
不安の
折だし、
御不自由まことにお
氣の
毒で
申し
兼ねるが、
近所へ
分けるだけでも
水が
足りない。
外町の
方へは、と
言つて
其の
某邸で
斷つた。
今宵の
用ひだけありしか
如何に、さらでも
御不自由のお
兩親が
燈火なくば
嘸お
困り
早く
歸りて
樣子知りたきもの
あゝ、お
泊め
申しましやう、
丁度炊いてあげますほどお
米もございますから、
其に
夏のことで、
山家は
冷えましても
夜のものに
御不自由もござんすまい。さあ、
左も
右もあなたお
上り
遊ばして。
遣はさるべきお
約束とや、
夫までのお
留守居、
又は
父樣折ふしのお
出遊に、
人任かせ
成らずは
御不自由も
少なかるべく、
何卒其處に
住まはせて、
世を
白波に
浦風おもしろく
行火へ
焙るならいつでも
床の
中へ
入れて
置いては
成らないぞえ、さんは
臺所の
火のもとを
心づけて、
旦那のお
枕もとへは
例の
通りお
湯わかしにお
烟草盆、
忘れぬやうにして
御不自由させますな