引違ひきちが)” の例文
ぼくですか、ぼくは』とよどんだをとことしころ二十七八、面長おもながかほ淺黒あさぐろく、鼻下びかき八ひげあり、人々ひと/″\洋服やうふくなるに引違ひきちがへて羽織袴はおりはかまといふ衣裝いでたち
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人々は縁下えんしたより、ばらばらとその行くほうを取巻く。お沢。遁げつつ引返ひきかえすを、神職、追状おいざま引違ひきちがえ、帯ぎわをむずと取る。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
醫學士いがくし細井ほそゐといふ色白いろじろひとにもまりかゝつたに、引違ひきちがへて旦那樣だんなさまのやうな無口むくちさまへ嫁入よめいつてたはうかいふ一時いちじ間違まちがひでもあらう、此間違このまちがひをこのまゝにとほして
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わが眼の前に絶えず彷彿ちらつく怪しの影を捉えて、一心不乱に筆を染めた結果、うやらうやらしんを写し得て、大略あらまし出来しゅったいした頃、丁度ちょうど私と引違ひきちがえての別荘へ避暑に出かけた貴族エル何某なにがし
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
黒縮緬くろちりめんひともん羽織はおり足袋たび跣足はだしをとこ盲縞めくらじま腹掛はらがけ股引もゝひきいろどりある七福神しちふくじん模樣もやうりたる丈長たけなが刺子さしこたり。これは素跣足すはだし入交いりちがひになり、引違ひきちがひ、立交たちかはりて二人ふたりとも傍目わきめらず。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よしやおふみ千通せんつうやうとゆきさへせねばおたがきずにはるまいもの、もうおもつてかへりませう、かへりませう、かへりませう、かへりませう、えゝもうわたしおもつたとみち引違ひきちがへて駒下駄こまげたかへせば
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)