引摺ひきずり)” の例文
剥出むきだし是サ此子はこはい事はない此伯父と一所に歩行々々あゆめ/\引摺ひきずり行を娘はアレ/\勘忍かんにんして下されませ母樣かゝさまが待て居ますと泣詫なきわびるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
昨日も丁度ちょうどここで逢ったから、腕を掴んで引摺ひきずり上げてろうと思ったんだけれど、生憎あいにく阿父おとっさんが一所いっしょだったから、まあ堪忍して置いてったのさ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「マダ早いよ、僕の処は夜るが昼だからね。眠くなったらソコの押入から夜具を引摺ひきずり出してゴロ寝をするさ。賀古かこなぞは十二時が打たんけりゃ来ないよ、」
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
頽然ぐたりとなると、足の運びも自然とおそくなり、そろりそろりと草履を引摺ひきずりながら、目的あてもなく小迷さまよって行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もとより何故なにゆゑといふわけはないので、墓石はかいしたふれたのを引摺ひきずりせて、ふたツばかりかさねてだいにした。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いわばすッてんてんののみのままでうじくのも面白おもしろかろうと、おとこやもめのあかだらけのからだはこんだのが、去年きょねんくれつまって、引摺ひきずりもちむこ鉢巻ぱちまきあるいていた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
引摺ひきずりのお轉婆てんばさん
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
つけられて惡漢どもよし/\合點がつてん承知の濱と遂ひに懷劔を捻取もぎとりつゝ手どり足どり旋々くる/\まき強情しぶとひ婀魔あまめと引摺ひきずりねぢつけ駕籠へ入れんとするを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
親仁おやじは郵便局の配達か何かで、大酒呑で、阿母おふくろはお引摺ひきずりと来ているから、いつ鍵裂かぎざきだらけの着物を着て、かかとの切れた冷飯草履ひやめしぞうりを突掛け、片手に貧乏徳利を提げ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「阿母さん、お葉は……。お葉は何処どこへ行った。」と、彼はお杉の腕を掴んで、力任せに引摺ひきずり廻した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この晩度々見えた白粉の女がそうらしくも思われたが、マサカに二葉亭が「一見して気象に惚れ込んだ」というほど思い込んだ女があんな下司げす引摺ひきずりだとは信じられなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
色情狂いろきちがいで、おまけに狐憑きつねつきと来ていら。毎日のように、差配のうちの前をうろついて附纏つきまとうんだ。昨日もね、門口の段に腰を掛けている処を、おおきな旦那が襟首を持って引摺ひきずり出した。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
發し其金の五十兩とは何所から出したる金なるぞ夫程迄にかくと云事ならば其方が養父の宅へ引摺ひきずりゆきて金の出所たゞして呉ん已に屹度きつと穿鑿せんさくに及びし上にて黒白くろしろわかちを付んと一たう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無論外形の一部分をモデルとしたので、全体を描いたのではなかった。第一、この女は随分マズイ御面相で、お勢のような美人でなかった。かつお勢よりもお転婆てんばであり引摺ひきずりであった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)