かへり)” の例文
旧字:
お村が虐殺なぶりごろしに遭ひしより、七々日なゝなぬかにあたる夜半よはなりき。お春はかはや起出おきいでつ、かへりには寝惚ねぼけたる眼の戸惑とまどひして、かの血天井の部屋へりにき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、昨夜よんべ那裏あちらのお客様がおかへりになるかと思つて、遅うまで待つてをりやしたで、今朝睡うござりやす」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
三人連は、八には読めないが、荒川と書いた点燈会社の軒燈のともつてゐる、黒い冠木門かぶきもんのうちへ這入はいつた。門の左手にある別当部屋から別当が出て、「おかへり」と叫んだ。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
羽織はおりのお色気いろけ取合とりあひいこと、本当ほんたう身装なりこさへ旦那だんなが一ばん上手じやうずだとみんながさうつてるんですよ、あのね此春このはる洋服やうふくらしつた事がありましたらう、黒の山高帽子やまたかばうしかぶつて御年始ごねんしかへり
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「宅の奥様のお手紙を持つて参つたのです。何の御用事があるか私には分りません。返事を承はつて来い! おかへりになるまで、おまちして返事を承はつて来い! と、申し付けられましたので。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ときがつかなかつたが、ときかへりがけに案山子かゝし歩行あるうしろからると、途中とちゆう一里塚いちりづかのやうな小蔭こかげがあつて、まつ其処そこに、こずえひくえだれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はい、とうにおかへりになりまして御座います」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
翌日よくじつまた正午頃しやうごゞろさとちかく、たきのあるところで、昨日きのふうまうりつた親仁おやぢかへりふた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「はい、おかへりが御座りやせん」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)