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孤獨
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こどく
あゝ
孤獨と
落魄!
之が僕の
運命だ。僕見たいな
者が家庭を
組織したら何うだらう。
妻には
嘆きを
懸け
子には悲しみを
與へるばかりだ。
成程さう
言へば
何處か
固拗のところもあるが、
僕の
思ふには
最初は
頑固で
行つたのながら
後には
却つて
孤獨のわび
住ひが
氣樂になつて
來たのではあるまいか。
孤獨の
身は
霜よけの
無き
花檀の
菊か、
添へ
竹の
後見ともいふべきは、
大名の
家老職背負てたちし
用人の、
何之進が
形見の
息松野雪三とて
歳三十五六、
親ゆづりの
忠魂みがきそへて
例へば
鰥寡孤獨を憐れみ、孝子節婦を賞するが如し。
天地間僕一
人、
鳥も
鳴かず。
僕は
暫らく
絶頂の
石に
倚つて
居た。この
時、
戀もなければ
失戀もない、たゞ
悽愴の
感に
堪えず、
我生の
孤獨を
泣かざるを
得なかつた。
久しぶりで
孤獨の
生活を
行つて
居る、これも
病氣のお
蔭かも
知れない。
色々なことを
考へて
久しぶりで
自己の
存在を
自覺したやうな
氣がする。これは
全く
孤獨のお
蔭だらうと
思ふ。