孜々として読書している青年たちを見ると、あの中から世を驚かす未来の天才が出てくるのであろうかと心強い気がする。
学生と読書:――いかに書を読むべきか―― (新字新仮名) / 倉田百三(著)
三島由紀夫:ナルシシスムの運命 (旧字旧仮名) / 神西清(著)
ただ孜々として天性好きな植物の研究をするのが、唯一の楽しみであり、またそれが生涯の目的でもある。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
おのが生の道筋を気長に孜々として掘っている同類の人々とも、接触することがなくなった。勝手は悪いがそれでも面白くなくもない異なった世界へ、陥ってしまった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
これ、余が生を宗教界にうけながら身を教育界に投じ、日夜孜々として国恩の万一に報ぜんとするゆえんなり。しかるに世人の教育、宗教をまつゆえんのもの、余うらみなきあたわず。
妖怪学講義:01 再版につきて一言を題す (新字新仮名) / 井上円了(著)
老婦人のそばにもまた、一人の店員が孜々としてかしずいている。もう一つのテエブルには、鳥打帽をかぶって木のパイプをくわえたなり、一人のイギリス人がぞんざいに座を占めている。
神の剣 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
世界が彼の名声を忘れずに大切にしているのは当然である。彼の名声は暴力や流血の行為によってあがなわれたのではなく、孜々として楽しみをひとびとに分けあたえたためのものだからだ。
ウェストミンスター寺院 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
秀吉の場合は、この平凡な道理に従って、常時、戦のない日でも、それを戦務と政略に、孜々、心がけて来ている結果のものなのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孜々として鼻息をうかがっているものなのだそうであるが、リオンスはそういう皮肉そうな言葉づかいでとりもなおさず自身の事大主義的な性根を暴露しているのである。
木を伐る者、それを削る者、杭を打つ者、柱をたてる者、地をならす者、穴を掘る者、男も女も子供も老人も、孜々としてそうして嬉しそうに、疲労を恐れずに働いていた。
日和下駄:一名 東京散策記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「レオナルド・ダ・ヴィンチの残した数々の作品。——絵画に、建築に、科学に残した業蹟は、彼が孜々として励んだ、ある偉大なる精神の仕事の途上に撒かれた、その一部の細片にすぎない」
その代り押しつけられた事柄を彼等独特のずるさによって処理しておるので、そしてその受身のずるさが、孜々として、日本の歴史を動かしてきたのであった。
田舎の天地を孜々として推移させて行く自然の力と、自分と佃とを支配した生存の力とを結びつけ、身に沁みて感じた。自分という一人の女性のうちにあるいろいろな欲望や本能。
孜々として勉学する、孜々として勉学する、ここに無限のものがあります。
獄中への手紙:11 一九四四年(昭和十九年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
嗚呼季節に向つて孜々として歩きださずにゐられない嗚呼生けるものの嗚呼泪ぐましい意志に打たれて、人々は嗚呼と驚きの叫びを放ちます。その芽をとつて食卓に供へた夜の嗚呼賑やかさ。
金談にからまる詩的要素の神秘性に就て (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
これから私は毎日午後すこし早めにそちらへ行って、かえって来てゆっくり休んで、夜は孜々として勉強します。楽しい心持です。そういう心持で、きのう省線の定期(半年)を買いました。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
二人が孜々として開拓しかけた面積などは、なんの跡形も残していない。大きな石ころと、一面の砂利であった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、田に帰ればまた、黙々と田を耕し、町へ帰ればまた、孜々として、小屋を建てた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)